【越山若水】おしょりん。厳冬の朝に降り積もった雪が凍り、田畑の上などの雪原が歩けるようになる意味の方言だ。福井県方言辞典には記載がなく同じ意味で越前市味真野、今立とされるおしょりんこ、おしょりのりなどが掲載されている▼地域によってはほかの言葉があるのかもしれない。「学校に一直線に歩いて行くことができた」といった体験のある方もおられるだろうが、一冬でもあるかないか、ごくまれだと思う▼この方言「おしょりん」をタイトルとした小説(ポプラ社)を出版しているのが藤岡陽子さん。福井で眼鏡枠作りを始め、一大産地に仕立てた増永五左衛門を描いた。先ごろ福井市内で「私の根底にある福井人の誇り」と題し講演。「何もないところから冬の村に産業を興したいという純粋さにひかれた」という▼自身は京都市生まれだが、母親が越前市味真野出身。「これまでに小説になっていない福井のヒーローを半分福井人の私が書くしかない」と明治の福井を調べ眼鏡枠作りも体験した▼小説のキーワードにおしょりんを据えることで「まっすぐに前に進む」増永の生きざまを重ね合わせて「自分の中で一本の筋が通った」と出版の秘話も披露。おしょりんはまた、母親の語る福井の冬の記憶そのものとも語った。小説の映画化に向けた動きもあるとか。実現したなら、おしょりんのシーンはぜひ見てみたい。

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