【越山若水】「けふからは日本の雁(かり)ぞ楽に寝よ」。俳人小林一茶は、大陸からはるばる海を渡ってきた雁に、安心して休むがいいと温かなまなざしを向けた。北陸は日本海側で数少ない越冬地だ。坂井平野に飛来するマガンの隊列「雁行(がんこう)」の観察会が北潟湖畔で開かれ参加した▼マガンは石川県加賀市の片野鴨池をねぐらとし、餌場の坂井平野との間を毎日往復している。この日は午前8時前、約1千羽の群れが数グループに分かれ、鴨池を飛び立った。編隊はV字など形を変えながら上空をゆうゆうと飛行。水田に着地し、夕方まで落ち穂などの餌を食べていた▼ガン類はかつて日本全国どこにでもいた。万葉集に多くの歌が載り、屏風(びょうぶ)など絵画にも描かれ、親しまれてきた▼しかし、明治以後は沼地の埋め立てや狩猟で激減。1971年にマガンは国の天然記念物に指定され、現在は約25万羽にまで回復した。ただ大半は宮城県で、北陸と山陰は減少傾向にある▼日本野鳥の会福井県の組頭五十夫副代表によると、減少の理由として米の作付けが減ったことや道路建設など開発による環境の変化、温暖化で越冬地が北に移行したことなどが考えられるという。「ガンは福井県の宝。県産米の消費を増やして餌場を守り、驚かせないよう車から降りずに観察してほしい」。日本人の文化や生活と深く関わってきたガンと共生する道を探りたい。

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