ツイッター上には「高収入」「闇バイト」「受け出し」(受け子と出し子の意味)などと書かれた受け子募集の投稿がまん延している(写真と本文は関係ありません)

 「こんにちは、金融庁の大野です。先ほどの電話の件で来ました。今からこの封筒へ封印作業をしますが、用意してもらったキャッシュカードと暗証番号を書いたメモ用紙をお持ちですか」

 ある民家の玄関先。キャッシュカードを封筒に入れさせる緊張の瞬間だ。家人が割り印の印鑑を部屋へ取りにいった隙に、偽のカードが入った封筒とすり替えた―。

 特殊詐欺の「受け子」として1カ月、全国の高齢者宅を回り、昨年秋に福井県内で逮捕された関東の20代の男は“大罪”の手口を昨日のことのように語った。

⇒【特集】詐欺グループの実態迫る「受け子その大罪」

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 仕事を辞め無職だった昨年秋、スマートフォンで手軽にアルバイトを探そうと、会員制交流サイト(SNS)のツイッターで「高収入」「高時給」と検索した。「1カ月で50万円」など食指が動かされる高額バイトの書き込みには、必ず「興味のある方はDM(ダイレクトメッセージ)をください」と書かれていた。犯罪とは書いていない。何のバイトか分からないが、車のローンや恋人の手術代などで借金200万円を抱えていたため、迷わずDMを送った。

 返信はすぐに来た。まず指示されたのは無料通信アプリ「テレグラム」のダウンロード。テレグラムは一定時間が過ぎるとやりとりの履歴が消去され証拠が残らない。メッセージや通話などのやりとりは全てテレグラムに切り替わった。「本部A」「本部C」「上原」「しょうた」…。4、5人の男から代わる代わる連絡があり、言われるがままに名前や家族構成、住所、実家の住所、運転免許証の写真、顔写真を送った。過去の職歴や犯罪歴も尋ねられた。そして、アルバイトの開始までに封筒を10枚ほど準備するよう言われた。

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 数日後、「本部」と名乗る指示役とのやりとり用の電話を受け取るため東京都内のある駅へ向かった。コインロッカーの鍵を暗証番号で解除すると、中に入っていたのはスマートフォン。コンビニに行き、コピー機のインターネットプリントで、「本部」の指示通り番号を入力した。印刷されたのは本名とは異なる「金融庁 大野輝也」と書かれた偽の身分証。送ってあった自分の顔写真が印刷されていた。「大野」と呼ばれるようになった。

 「少しおかしい」と思ったが、指示に従い名札として首掛けストラップに入れた。

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 電話や電子メールを用いて高齢者らを信じ込ませ、金をだまし取る「特殊詐欺」。2019年上半期の被害総額は全国で約146億円(福井県内14件で約9200万円)に上る。昨年福井県警に逮捕され、今年10月に懲役3年6月が確定した「受け子」の告白を通し、詐欺グループの実態に迫る。

⇒【特集】詐欺グループの実態迫る「受け子その大罪」

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