【ゆるパブ】幽遊白書、刃牙がつないだ友達関係

 スマホ世代の実像について迫る「ゆるパブオフ会in若狭高校(福井県小浜市)」。これまで現役生徒の話を通して、今の高校生世代の人間関係の結び方などにスポットを当ててきたが、ここで携帯電話が普及しだした頃に同校で高校生活を過ごした慶応大学特任准教授の若新雄純さんの話を聞いてみよう。

⇒【前回の記事】スマホ世代は人間関係割り切ってる?

⇒【前々回の記事】高校生「竹田恒泰氏が好きだけど」

 ■進級で関係リセット

 若新さんが高校生の頃はスマホもなく、インターネットもまだ学校の視聴覚室で見る程度。山と海に囲まれたいち地方で手にすることができる情報は限られていた。だから「小浜の常識が世界の常識だった」。

 交友関係は学校の友だちしかいなかった。それを保っていくためには、友だちと合わせることが大事だったが、若新さんは生きづらさを感じていたという。「自分も合わせきれん人間やったから超ずれ扱いされるわけじゃん。今は東京で生きてるから、無限に変わってる人がいるから、いくらでも仕事に出合えるけど、この集落でずれると終了。超面白くなかった、しんどかったね」。

 しかも、進学や進級のタイミングで友だちは変わった。また一から合わせる作業だ。そして今までの友だちは過去のものとなった。

 「昔は、学年が変わったら終わっちゃうわけね。中学から高校に変わったら終わっちゃうわけね。小まめに連絡取れないから。今ある関係を大事にしないといけないから。今ある関係が壊れないように、好きなものを合わせたりとか、お互いにペースを合わせることがとても大事。ショッピングセンター寄って行こうって言われたら寄っていくんだよ。寄ってくものなんだよ。『うわ、きょうは6時からのテレビ番組見たかったけどなぁ、6時の電車でいいや』って心の中で思うわけ。『ごめん、俺6時からの~見たいから、5時半の電車で帰るわ』っていうのは、よっぽどなやつしか言わない。そうやって集団が成立してたのね」

 「僕らの時代ってさ、学年が変わると、あんだけ仲良かったのにリセットされることがあったわけ、平気で本当に。前に仲良かった友だちと、新しい学年でできた友だちが、自分は両方とも仲いいけど、両方の友だちがすぐに仲良くなるとは限らんし、わからんわけよ。でも1年生のときに仲良かった人と、2年生になっても一緒に仲良くするためには今いる新しいグループの人といる時間の中に、その人(1年生の友だち)をいれなきゃいけないわけよ。ほかに会う時間はないわけじゃん」。

 ■ワンコール

 友だちとの関係を深めるために「ワンコール」という文化があったという。「僕らはぎりぎり家電(いえでん))世代。携帯電話が普及したちょうど境目ぐらいで、電話代が高かったから、ばんばんかけれんし、ワンコールがはやった時代で。ただ一回だけならして切るっていう。あいさつなの。『いいね』みたいなもの。ワンコールで切れば電話代かからないじゃん。メール送るのにもお金かかるけど、ワンコールで切れば誰にも金かからずにコミュニケーションが取れるっていう」。

 ばりばり家電(いえでん)世代の41歳の筆者にとって「ワンコール」になじみはないが、若新さんいわく「すっごい軽い『おはよう』みたいなもの」という。相手の携帯電話の着信履歴に残ることで親近感がわいたとのこと。朝起きたときにすることもあれば、電車ですれ違ったときにもワンコール鳴らしたのだそうだ。

 スマホが普及した今では、少し滑稽なようにも見えるが、「当時、携帯電話をみんな持ち始めて、こんな方法でつながれるんやっていうのを確認したかったんやと思う」と若新さんは回想する。

 ■ブームしかなかった

 合わせた思い出の例は事欠かない。

 「僕らは3年間の中で漫画のブームが何回か来るわけ。で、グラップラー刃牙がはやったときは、全員グラップラー刃牙読んで、もうグラップラー刃牙のシーンを再現できるまで、読み込むわけね。時代遅れでAKIRAっていうのがはやって、全員AKIRA読んで、もう全員AKIRAマスターみたいなのがあったの。それは教室の中で、みんながぐるぐる漫画回し始めると、もうそれは必須テキストみたいな、これは読んどかなまずいみたいな。で、それを読むことによって友だちとの共通の話題ができて盛り上がれるし、そういうのが学校っていう場だった」

 「小学生のときは漫画、同じ漫画を読んでた。俺らのときは全員『幽遊白書』読んでたから。分からんと思うけど、幽遊白書っていう伝説的な漫画があって、もうとにかく全員、幽遊白書なのね。で、お互い(漫画に出てくる)技の名前とか分かるわけ。休み時間とかふざけてても、そのキャラクターの技とか出したら、漫画通りによけたりした」。

 聞く音楽についてもみんな一緒だったという。

 「僕らはCDを回して、仲良しグループは全員CDを一緒にするわけよ、全員コピーするから。当然聴く音楽も一緒になるやん。何曲目がいいとかって。で、カラオケ行くと、みんなアルバムの上から下まで歌えるの。わざわざコピーしてくるタイプの子もおったからね。全員分とか。それがお互いの帰属意識というか」

 世代の近い筆者もしみじみと共感する話が多かった。閉じられた世界で必死だった。わずらわしいこと、今の世代はスマホ一つで飛び越えた。

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 この記事は11月18日に福井県立若狭高校で開いたトークイベントの詳細をシリーズで紹介します。次回は12月27日に「福井新聞ONLINE」で掲載します。
 

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