西川一誠前福井県知事

西川一誠さんの小説を監修し、出版した山下英一さん=福井県越前市の自宅

 福井県の前知事、西川一誠さん(74)が、明治初期に福井藩が招いた米国人教師W・E・グリフィスを主人公にした小説「憂い顔のグリフィス先生」を執筆。高校時代の恩師でグリフィス研究家山下英一さん(85)=福井県越前市=が監修し、出版した。青年グリフィスが来福し上京するまでの福井時代を巧みな人物描写で生き生きと表現した。来年のグリフィス来日150年を前に、小説を通してその業績や人物像に再び光が当たりそうだ。

 西川さんの福井県立丹生高校時代の英語の担任が山下さんで、知事になってからも交流があった。グリフィスに関心があった西川さんは、山下さんの著書や論文に目を通していた。心情面の理解について、少しでも山下さんの研究の役に立てばと小説を執筆。山下さんの助言も得て2年ほどかけて仕上げた。原稿の扱いを任された山下さんは内容を高く評価し、多くの人に読んでもらおうと出版することにした。

 小説は全7章で構成。福井を訪れ最初の1週間の見聞や同僚教師ルセーとの交流、白山登山の記録、廃藩置県で混乱する藩内、大学南校(東京大の前身)で教えることになり上京するまでの出来事を描いている。

 グリフィスが見た福井の情景や人々との交流、揺れ動く社会情勢なども盛り込んだ。史実を踏まえているが、遠い異郷の地で暮らす不安、ルセーとの文学談議、身の回りの世話をする日本の娘とのやりとりなど、創作部分でグリフィスの内面世界にも迫っている。

 元中部大教授の山下さんは、登場人物の説明と解説文を付けた。「西川さんは文章が上手。若い人たちに読んでもらい、これを機にグリフィスを題材にした新たな作品が生まれたらうれしい」と期待する。

 西川さんは著書に「『ふるさと』の発想」(岩波新書)、エッセー集「桐の花」があるが小説は初めて。「山下先生には、思いがけず出版までしてもらい感謝したい。幕末の頃の福井人の幸せとか親切、それにグリフィスの掲げた理想と実行できなかったことの矛盾を描きたかった。できれば今後、グリフィスの日常生活や重要な藩士との交流なども書いてみたい」と話している。

 四六判、272ページ。装丁・イラストは明珍博子さん=福井市=が担当するなど、山下さんの知人が出版に協力した。1800円(税別)で、能登印刷出版部が県内の書店などで発売している。

 ■グリフィス(1843~1928年) 米国の教育者、キリスト教の牧師。1871年、福井藩の明新館で理化学教師となり、約11カ月滞在後、大学南校で教えた。帰国後は講演や著述で日本を紹介。著書に「皇国」「ザ・ミカド」「日本昔話」など。

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