「プレミア12」で初優勝を果たし、涙ぐむ稲葉監督=東京ドーム

 11月に行われた野球の国際大会「第2回プレミア12」で日本が初優勝を飾った。

 主要大会で日本が頂点に立ったのは2009年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)以来で、来年夏の東京五輪に向けても大きく弾みがついた。

 大会前の強化合宿から約1カ月間の取材で、印象に残った出来事のベスト3を挙げてみた。

(3)秋山翔吾(西武)の心意気

 10月31日に那覇市で行われたカナダとの強化試合で、死球で右足薬指を骨折し、離脱した。チームはもちろん、海外フリーエージェント(FA)権を行使して今オフに米大リーグ移籍を目指す本人にとっても後に響くけがだった。

 ただ、そんなことを一切感じさせないコメントが胸に来た。「試合に出る上では起こりえることなので仕方ないと思っています。世界一を取るためにこのメンバーで参加できたことは、自分にとって何より財産です。けがを恐れて参加しない方が後悔したと思います」

 台湾での1次ラウンドが終わり、日本に場所を移して行われた2次ラウンド以降は毎試合、リハビリ後に球場に足を運んで仲間を激励し、試合中はスタンドから声援を送った。

 サッカーやラグビーと比べ、野球はどうしても代表への思いが希薄になりがち。辞退者も目立った今大会で、日の丸を背負うことへの誇り、気概が感じられた。

 (2)周東佑京(ソフトバンク)の足

 11月11日の2次ラウンド初戦、オーストラリア戦だった。

 1点を追う七回無死一塁で、代走で起用されると簡単に二盗を決めた。さらに2死後には相手のわずかな隙を突き、三塁を盗んだ。

 源田壮亮(西武)の意表を突くセーフティーバントにも反応し、スピードに乗って本塁に生還。この好走塁で流れががらりと変わり、チームは逆転勝ちを飾った。

 周東は日本シリーズまで戦ったため、代表合流が遅れた。周東抜きで戦っていた大会前の練習試合でも、稲葉篤紀監督は代走の切り札の起用時を常に探りながら采配を振るっていた。

 「ジョーカー的存在」と話していた監督の期待に見事に応え「気持ちの準備はしていた。絶対に行けると思った」と事もなげに言った。

 今シーズン、私は関西圏のチームを中心に取材をしていたため、周東の足を生で見たのは今大会が初めて。

 想像以上の速さに驚かされた。元中日で「ディンゴ」の登録名でプレーしていたオーストラリアのニルソン監督も同じ感想だった。「彼のスピードはこの大会でも群を抜いている。ワールドクラス」と感嘆していた。

(1)稲葉監督の男泣き

 11月17日の宿敵韓国との決勝を制し、ベンチを出た稲葉監督の表情はみるみる崩れ、涙がこぼれた。

 合宿初日から「世界一を目指す」と自らにも、選手にも重圧を掛けていただけに、安堵感もあっただろう。

 ただ、一番の要因は「選手ですよ。慣れないポジションで、みんなが世界一を取るために一生懸命やってくれたなと。こみ上げてきました」。

 実績のある一流プレーヤーたちがシーズン中とは違う役割にも練習から前向きに取り組み、結果を残した。

 監督が何よりも求める「結束力」が強まった。最後のミーティングで、選手には「シーズン直後にジャパンのために集まってくれて、本当にありがとう」と感謝し、さらに東京五輪でも中心を担うであろう今大会のメンバーに「これからの野球界を引っ張っていってほしい」とも期待した。

浅山 慶彦(あさやま・よしひこ)プロフィル

2004年共同通信入社。相撲、ゴルフなどを経てプロ野球担当に。阪神、ロッテ、巨人などを担当。愛媛県出身。

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