2018年2月、平昌冬季五輪の開会式でドーピング問題により五輪旗を先頭に入場行進する、個人資格で参加したロシア選手たち(共同)

 世界アンチドーピング機関(WADA)は12月9日、スイスのローザンヌで常任理事会を開き、検査データを改ざんしたロシアのアンチドーピング機関を不適格な組織と認定し、ロシア選手団や政府関係者らを2020年の東京オリンピック・パラリンピックだけでなく、2022年の北京冬季オリンピックを含む国際的な主要大会から4年間除外することを決めた。

 WADAが2018年4月から導入した規定により、国際オリンピック委員会(IOC)や国際パラリンピック委員会(IPC)、各国際競技団体は、原則として今回の判断に従う義務がある。

 ロシア側にはスポーツ仲裁裁判所(CAS)に異議申し立てを行う権利があるが、WADAはCASに持ち込まれたとしても、立証できる自信をのぞかせており、ロシア側は追い込まれた格好になっている。

 WADAは無実と証明された選手に関しては大会に参加できる道を残しているものの、ここ数年にわたって調査を進めてきた姿勢からは、ロシアに対する堅牢な意志が伝わってくる。

 今回の問題を受け、日本のテレビメディアからコメントを求められたが、情報番組の作り手のスタンスは奇妙なほど一致していた。

 「ロシアのユニフォームを着て出場できない選手たちが、かわいそうだと思うんですが…」

 そう言ってくる制作者は、一人や二人ではなかった。すべてがこの調子だったため、驚いたというより、がっかりした。

 安易な同情は禁物である。WADAはかねてから、ロシアのドーピング問題は政界を巻き込んだ組織的な犯罪であり、スポーツにおける公平性を著しく毀損するものだとして、調査をずっと続けてきた。

 ロシアの選手たちがクリーンであることを証明できない限り、ルールに則ってオリンピック・パラリンピックに向けて準備してきた世界中の選手たちに不利益が生じることが想定される。

 公平な競争環境が担保されない限り、真面目に強化を進めてきた選手たちの方が気の毒である。

 どうやら、日本のテレビ制作者たちはそのことに思いが至らないようで、再三再四「ロシアの選手が気の毒」という内容に沿ったコメントを求められ続けた。

 日本は、アンチドーピングに対する意識が低すぎると思わざるを得ない。

 2017年のロンドンで行われた陸上の世界選手権を思い出す。

 ドーピング履歴のあるアメリカの短距離選手ジャスティン・ガトリンに対して、ロンドンの観客はすさまじいブーイングを浴びせた。

 これは、観客による批評の一形態である。

 日本は無垢というか、ホスト国としてアンチドーピングについての意識をより高めなければいけないと思う。それもオリンピック、パラリンピックに向けた準備の一部だ。

生島 淳(いくしま・じゅん)プロフィル

1967年、宮城県気仙沼市生まれ。早大を卒業後広告代理店に勤務し、99年にスポーツライターとして独立。五輪、ラグビー、駅伝など国内外のスポーツを幅広く取材。米プロスポーツにも精通し、テレビ番組のキャスターも務める。黒田博樹ら元大リーガーの本の構成も手がけている。

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