上沼恵美子『時のしおり』

 活動の大半は関西ローカルなのに、その人気は全国区でトップクラスという稀有な存在の上沼恵美子。約4年ぶりとなるシングルだが、演歌歌手としても超一流だと認識させられる。

 表題曲は、昭和の東京五輪や大阪万博、そして平成の大震災を令和となった今、回想するというマイナー調の歌謡曲。“あの頃は輝いていた”“あの頃は悲しかった”という想いを行間に忍ばせつつ、ラストで「心を繋いで 生きましょう」と熱く歌い上げる作品全体の構築力に引き込まれる。

 カップリングの『人生これから』は、ほのぼのとしたムーディーなエールソング。こちらも、「これからですよ」「がんばりましょう」といったキーワードを、押しつけず、温かく響かせる所が実に上手い。加えて、2曲とも64歳とは思えぬほど艶っぽい歌声に驚かされる。毒舌マシンガントークのイメージは欠片もないので、是非じっくりと聴いてほしい。

 本作の前月に発売されたアルバム『上沼恵美子 コンサート愛唱歌撰』でも、石川さゆりの『天城越え』や、やしきたかじんの『やっぱ好きやねん』など自由に歌いまくっているのが聴いていて気持ち良い。彼女の歌声に酔いしれていると、ギャップの大きな人の魅力にますます憑りつかれるようになるはず。

(テイチク・1182円+税)=臼井孝

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