【論説】来月からの通常国会の焦点とされる年金制度改革。骨格が固まりつつあるというよりも、骨抜きになりつつあると言った方がいいだろう。政府の改革方針は与野党や経済界の反発を受け、当初案からトーンダウンするばかりだ。

 国民年金に加入するパートなどの短時間労働者を厚生年金に加入させる案は、企業規模の要件を現行の「従業員501人以上」から当初は「撤廃」「21人以上」とする案もあったが、経済界などの抵抗を受け早々に消えた格好だ。

 国民年金は保険料を40年間納めた場合でも現状、月額約6万5千円にとどまっている。厚生労働省の財政検証では約30年後には約3割も目減りする。厚生年金に入れば、将来の年金はその分手厚くなり、低年金で生活保護に頼らざるを得ない状況を減らすことにもつながる。加えて、加入者を増やすことは年金財政の安定にも資する。

 「51人以上」とする方向で検討されているが、ここに来て、経済界への配慮から2022年10月に「101人以上」、24年10月から「51人以上」に引き下げる2段階方式での導入が取り沙汰されている。

 「51人以上」とした場合、新たに65万人が加入できる一方、厚生年金の保険料は労使折半のため、企業の負担は1590億円増えるという。政府による中小企業への支援を求める声もあるが、税金投入は将来世代へのつけ回しになる可能性があり、制度設計に慎重を期す必要があるだろう。

 働く高齢者で一定以上の収入がある人の年金を減額する「在職老齢年金制度」の改革は迷走が際立った。65歳以上の場合、現行毎月の賃金と年金の合計が「47万円超」の人が年金減額の対象になっている。

 政府は当初「62万円超」に引き上げる方針だった。その場合、年間の年金支給額が約2200億円増え、年金財政が悪化、将来世代の年金水準が下がることになる。与党内からも高所得者優遇と批判され、「51万円超」に修正したものの、それでも異論が噴出し、結局「47万円超」に戻さざるを得なくなった。

 高齢者の就業意欲を減退させないための改革だったが、「(減額が)意欲を減退させることはない」(中西宏明経団連会長)などと経済界からも疑義の声が上がった。非正規雇用などで低賃金を余儀なくされている人から見れば、47万円の基準額を上げることは金持ち優遇策と映るはずだ。

 今回の改革案は中途半端に終わる可能性が高い。痛みをどう分かち合うか、政府のスタンスが定まらず、説得力不足が否めない。年金改革は不断に続けなければならないが、これでは先が思いやられる。

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