【越山若水】「生涯一編集者」をモットーとし、書評サイト「千夜千冊」などの執筆を手がけた松岡正剛さんに「ことば漬」(角川文庫)という本がある。言葉を中心にした著作の解説書である▼その中であいまいな日本語だけを編集した「あいまい語辞典」(東京堂出版)を取り上げている。こうした両義的な概念を持つぼんやりした言葉を、松岡さんは二つの光を持つという意味で「トワイライト・カテゴリー」と名付け、二つの代表的な例を紹介している▼まず「加減」である。お湯加減や味加減がいい場合もあれば、ちゃらんぽらんな意味の「いいかげん」もある。次いで「結構」。もう必要がないと伝える「結構です」も、良いことを肯定する「結構です」もある。どうでもよくて「ケッコー」と受け流す場合もある▼この話を胸に納めて、きのうの参院本会議の審議を見守った。注目は安倍晋三首相の「桜を見る会」の招待者名簿が廃棄された件。首相は「予定通り廃棄したもの。野党の資料要求とは全く無関係」「(データ復元は)不可能である」と答弁。疑惑の追及をかわした▼さて、首相発言の「加減」は、良かったのか悪かったのか。与党にすれば責任を果たして「もう結構」と幕引きを図りたいところ。しかし野党はこのまま「結構でした」と賛同できまい。臨時国会の会期は9日まで。雲行きは何ともあいまいである。

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