【越山若水】その言葉は新約聖書にある文言から生まれた。しかし宗教用語ではなく、科学的な現象を指すわけでもない。実は、米国の社会学者が「格差の拡大」を説明するのに用いた名称である▼それは「マタイ効果」と呼ばれる。「持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまで取り上げられるであろう」(マタイ福音書)が由来で、恵まれた人がより良い条件でさらに恵まれていく累積効果のことを表している▼一方で、貧困者は不利が重なり逆境から抜け出せず、社会的な格差は親から子へと連鎖し増幅していく。日本でも今や7人に1人が貧困とされ、マタイ効果のマイナス面が際立っている。親の年収で子どもの人生が左右されないよう、国の積極的な施策が重要になる▼政府は5年前に策定した「子どもの貧困対策大綱」の見直しを閣議決定した。貧困の実態を捉える指標として「ひとり親の正規雇用割合」などを追加。25項目から39項目に増やしより多面的に対応する。生まれてから社会的な自立まで切れ目ない支援に努めるという▼わが国の格差拡大は1980~90年代、レーガノミクスやサッチャリズムの影響で、さらにバブル崩壊で導入された競争原理の徹底に端を発している。いわば「負のマタイ効果」は長い政治の流れで生まれた。やはり政治が解決すべき課題である。

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