【論説】2022年度から実施される高校の新学習指導要領の国語を巡って波紋が広がっている。「論理国語」や「文学国語」などが新設される。文部科学省は実社会で求められる論理的な思考力の育成を狙いとするが、文学関係者からは文学作品に触れる機会が減るのではないかとの懸念の声が上がっている。

 ■論理思考の重視■

 科目再編では必修の4単位「国語総合」が2単位の「現代の国語」「言語文化」に分けられる。「国語総合」を受け継ぐのが「言語文化」で従来の文学、評論、古典などを扱うが単位数は半減される。これに対し論理的な実用文中心となる「現代の国語」が新設される格好となる。

 選択科目では現在の「国語表現」「現代文」「古典」から「国語表現」「論理国語」「文学国語」「古典探究」への改編で、中でも「論理国語」と「文学国語」の分離が焦点となっている。

 科目再編ではとりわけ、論理思考が重視される。その背景には15年に実施されたOECD参加国の学習到達度調査(日本は高1対象)で数学、科学は上位だったのに対し、読解力のみが低下したことが影響していると指摘する向きが多い。

 ■共通テストと連動■

 指導要領改訂は20年度から、大学入試センター試験に代わる「大学入学共通テスト」と連動している。試行調査では、高校の生徒会規約などが出題されたことから、共通テストでは実用文が増えるのではないか。大学受験を考慮すると選択科目では「論理国語」を選ぶ高校が多くなるのではないかといった見方が広がっている。

 このため作家や評論家らで作る日本文藝家協会は「各分野の有識者、専門家の知力を総結集、意見を交わすことができる公開の場を設ける」と表明。文学関連16団体も単位認定や教科書選定で人文知が軽視されることがないようにとの見解を発表している。

 「文學界」「すばる」「季刊文科」など文芸誌が相次いで特集を組んでいる。近年の高校生の読書離れを想起すれば、危機感を抱くのは当然だろう。中でも「文學界」誌上で本県ゆかりの歌人、俵万智さんは神奈川の県立高校での国語教師の体験を踏まえ言及。説得力がある。

 ■豊かな言葉の遣(つか)い手■

 国語教育を通し生徒たちに「豊かな言葉の遣い手に育ってほしい」とし、自らの歌人の立場から「三十一文字で三十一文字ぶんのことしか伝えられなかったら、それはもう電報だ。三十一文字で、百文字ぶんも千文字ぶんものことを伝えられるのが、言葉のすごいところだろう。つまり、そういうものを味わうなかでしか、豊かな言葉の遣い手は育たないのではないかと思う」と指摘。国語教育の本質に迫っている。

 評論、実用文を読みこなし論理的な文章の作成、説明力の育成は時代の要請でもあり必要なことは間違いない。だが多感な高校生が教科書でよりすぐりの文学に触れる意味はなお大きいし、文学の解釈自体が多様性に富むことを知る意義もある。教科書で文学との出合いが人生をより豊かなものにする可能性も秘めているのではないだろうか。

 そもそも論理と文学を分けることが国語教育にとって、どういう意義があるのか。目先の大学入試対策といったテクニカルな視点ではなく、文科省自らが学校教育の旗印に長年掲げている「生きる力」に照らし熟議すべきである。

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