福井人の不幸せ一覧

 性別による過度な役割分担、地域の風習への固執、思い思いの選択がしづらい環境…。「幸福度日本一」の福井の社会は、実はさまざまな不満や苦悩の上に成り立っているという実態が、福井新聞と日立京大ラボの共同研究プロジェクト「ふくい×AI 未来の幸せアクションリサーチ」で読者から寄せられた「不幸せ」の回答結果に表れた。回答内容は10項目程度に分類できたが、その全体をとらえてみると、福井の社会に通底する課題として「多様な生き方に不寛容」という風潮が見えてきた。

 「不幸せ」の回答の類型化で、最多71件が集まった「狭い価値観を押し付けられる」(分類「文化」)の項目では、持ち家や共働きなど典型的な福井の暮らしを強要される空気に、息苦しさを感じる声が目立った。「母親の負担が大きすぎる」(分類「家族・友人」)の項目では、家事も子育ても女性の役割という決め付けに不満が噴出した。「福井の常識は日本の非常識」。福井県出身の40代男性はこう苦言を呈した。

 標準的とされる生き方の幅が狭すぎて、そこから少しでもはみ出ると、途端に生きづらくなる―。寄せられた多くの「不幸せ」からは、そんな共通要因を見いだすことができる。解決のためには、さまざまな生き方や考え方を認め合える多様性社会を目指すことが重要と言えそうだ。

 プロジェクトでは、これに先立って「幸せ」についても募集した。両方を照らし合わせると、幸せの回答が最も少なかった「文化」の分類に、不幸せが最も多く集まった。一方、「家族・友人」の分類は、幸せが最多だったにもかかわらず、不幸せの声も集中した。ある回答者は「幸せと不幸せはもろ刃の剣」と表現。「人間、住めば都。この『今』を幸せと思えばよいのだ」(あわら市の60代女性)と、住民一人一人のとらえ方による違いを指摘する声もあった。

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 福井新聞の創刊120周年に合わせたプロジェクト「幸せアクション」では、読者の皆さんの声を基に、幸せを実感できる社会像を探っています。「不幸せ」募集はその手掛かりとするためで、寄せられた切実な痛みや悩み、生きづらさは、私たちみんなが共有すべき課題です。「幸福度日本一」に潜む「福井人の不幸せ」を見つめ、目指したい社会の姿を考察します。

【文化】狭い価値観を押し付けられる 71件

 〝個〟が存在せず、女のことをただ単に子どもを2人以上産んで働いて子育てして家事もやる生き物だと認識している。これを指摘しても、何を問題としているのか理解できない。そう育てられてきたから。こんな土地で暮らしている人間の気が知れず、就職して1年間貯金をした後、上京した。福井での20年間は死んでいたも同然だった。(県外在住、20代女性)

【家族・友人】母親の負担が大きすぎる 62件

 同居の義父母はいまだに「親だから」といろんなことを押し付けてきます。孫の教育とか、村の活動への考え方だとか。それが絶対正しいと譲らず、息子である旦那の話すら聞き入れません。義父母と話をしているとかみ合わないことが多くて、嫁ぎ先を間違えてしまったかな、と不幸せな気持ちになります。(福井市、50代女性)

【まちづくり】地域コミュニティーに閉塞感 37件

 (高校まで暮らした地域で感じたのは)田舎特有の近所の目。就職先はもちろん、出勤時間や帰宅時間までも全て見られている。母は常に世間体を気にする。あの田舎が嫌だった。今でも住みたいとは思わない。(福井市、40代女性)

【仕事・マイプロ】自分らしく活躍できない 32件

 就職活動した時、女性差別を明らかに感じて、県外で就職しました。女性はいずれ結婚して共働きになるから、男女同じ仕事でも女性は安い給料でいいみたいな感覚の会社が当時多い気がしました。福井では女性であることによる不幸せを感じました。(県外在住、30代女性)

【健康】互いの弱さに寄り添えない 13件

 子育て支援はあっても子づくり支援はない。不妊治療で勤務を調整してもらおうとしても病気ではないのだから、という空気がひしひしと伝わってくる。職場や近所で子どもがいる人の話を聞くのが苦痛。不妊の私がその場を去るしかないのだ。子育ての苦労話が幸せな悩みに聞こえる。(坂井市、30代女性)

 未来の幸せアクションリサーチ 福井新聞の創刊120周年記念の取り組みの一環で3月に始動。福井県在住・出身者から寄せられた約千件の「幸せ」を基に、県内各分野の実践者を招いたワークショップを計3回開催。幸せの指標として150項目を抽出し、AI(人工知能)で2050年の福井の社会像をシミュレーションした。結果の分析を重ね、より幸せを実感できる社会づくりのために住民ができる身近な行動「小さな幸せアクション」30項目を8月にまとめた。
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