【論説】政府は来週中にも約3年ぶりとなる経済対策を取りまとめ、2019年度補正予算と20年度当初予算を一体で編成し必要な予算を計上する。台風など自然災害からの復旧・復興や被災者の生活再建に向けた迅速な支援は欠かせない。日米貿易協定で米国産牛肉の輸入が急増することが想定され、日本国内の畜産農家への補助も必要不可欠だ。

 経済対策は災害対応のほか、海外経済の下振れリスクや東京五輪・パラリンピック後の景気落ち込み防止などを目的に策定される。問題は、与党から10兆円規模を求める声が相次いでいることだ。予算編成は必要な施策を精査し、費用を積み上げるのが本来の在り方だが、総額ありきの議論が飛び交い、要望が多岐にわたっている。歳出の拡大圧力は強まる一方だ。

 そもそも景気を喚起する大型対策が必要な情勢なのだろうか。米中貿易摩擦などにより中国経済は減速しつつあるが、通商交渉が一定程度まとまれば上向く可能性もある。香港のデモといった不安要素はあるものの、日米の株価は上昇傾向にあり、政府の景気認識も「緩やかに回復している」との判断を維持しているではないか。

 政府が対策に盛り込むメニューには、▽小学5年生から中学3年生がパソコンを1人1台使える環境の整備▽自動ブレーキなど先進的な安全機能を備えた「安全サポートカー」の購入補助▽ドローンなど先端技術を活用したスマート農業の促進▽韓国人旅行客の減少に苦しむ長崎県対馬市の観光振興支援―などが挙がっている。

 時代に即した施策もあるが、経済対策として急ぎ対応しなければならないものとは思えず、違和感が拭えない。特に、対馬市の支援に関しては韓国人観光客の減少を招いたのは元徴用工問題を巡る政府の外交のつけともいえるものだ。九州を中心に悪影響が広がっており、対馬市だけでいいのかとの疑問も残る。

 政府は当初、19年度の税収見通しを62兆5千億円としていたが、1~2兆円の下方修正が必要になっている。中国経済の減速などで輸出が低迷し、法人税が大幅に減少したためだ。10兆円規模に膨れ上がれば、赤字国債の増発は避けられないはずだ。

 財務相の諮問機関である財政制度等審議会は先日、予算編成に向けた建議(意見書)を提出した。その中で、借金に依存した財政運営を「いつまでも低金利に安住はできない」と批判し、歳入と歳出の両面からの改革を要求。さらに、基礎的財政収支については25年度の黒字化を堅持するよう求めている。政府や与党はそうした声を無視するつもりなのか。

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