若い世代の不幸せとは…(写真と本文は関係ありません)

 持ち家、親と同居、共働きが当たり前。福井の“標準”から外れると肩身が狭い―。福井新聞と日立京大ラボのプロジェクト「ふくい×AI 未来の幸せアクションリサーチ」に寄せられた「福井の暮らしで感じる不幸せ」の回答を類型化したところ、「狭い価値観を押しつけられる」(分類「文化」)が最多の71件だった。

 「狭い価値観を押しつけられる」の項目は、20~30代が感じる不幸せの3割超を占め、40~50代の2割台を上回った。「結婚して子どもを産むのが当然」「長女は婿養子を取らなければならない」など、地域社会の同調圧力で自分の人生を自由に選択しにくくなっている若い世代の生きづらさが浮き彫りとなった。

 「福井県から出たこともない人たちが、昔からの自分たち福井県人の物差しのみで物事を測っている」と嘆いたのは越前市の50代女性。永平寺町の30代女性は、固定観念に縛られがちな風潮を「幸せの形がテンプレート(ひな型)化している」と皮肉った。

 職場や地域の環境に対し「自分らしく活躍できない」(分類「仕事・マイプロ=マイプロジェクト」)との回答は32件。性別による役割分担意識や働き方への不満が挙がった。この項目も比較的若い世代から集まり、回答者の8割は40代以下だった。

 障害や病気に対する偏見、無理解を訴えた「互いの弱さに寄り添えない」(分類「健康」)は13件で、当事者から「マイノリティーを受け入れられない人が多い」と悲しむ声が寄せられた。「公共交通が不便」(分類「まちづくり」)は14件あり、極端な車社会が指摘された。

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 福井新聞の創刊120周年に合わせたプロジェクト「幸せアクション」では、読者の皆さんの声を基に、幸せを実感できる社会像を探っています。「不幸せ」募集はその手掛かりとするためで、寄せられた切実な痛みや悩み、生きづらさは、私たちみんなが共有すべき課題です。「幸福度日本一」に潜む「福井人の不幸せ」を見つめ、目指したい社会の姿を考察します。

【文化】狭い価値観を押しつけられる 71件

 私、バツイチで子どももいません。それを話すと、なんで再婚しないの? と言われる。結婚や出産は個人の選択だし、自由だと思うのは自分だけ? 福井の標準に当てはまらない自分は肩身が狭い。(福井市、40代女性)

 子どもが産まれると、自分で見たいのに、預けて働きに行けと周りにうるさく言われた。仕方なく仕事を続け、定年まで頑張るために、介護施設に義父母を預けようとすると、今度はなんで仕事辞めて家で介護しないの? と言われる。おかしくないですか?(越前市、50代女性)

 幸せの形がテンプレート化している。親の近くにいることが親孝行で幸せ。国公立大を出て公務員として働くことが幸せ。一戸建てを持つことが幸せ。都会には、さまざまな形の幸せがあり、幸せを押し付けられることもないのだろうな。(永平寺町、30代女性)

 「出る杭(くい)は打たれる」感をずっと感じてきた。福井は個性を嫌い、皆同じラインに立つことが常識。「現状維持is Best」(永平寺町、50代女性)

 3姉妹の母をしている専業主婦です。いまだに「次は男を産まなあかん」と言われます。それに「暇じゃない?」「いつまで旦那の稼ぎで遊んでいるつもり」と、サボり扱い。専業主婦だって立派に働く女性だということをもっと理解していただきたいです。(越前市、30代女性)

 親に同性愛者であることを打ち明けても否定され、近所には知られたくないと言われた。田舎ゆえ、地域内のつながりが強いのだろうが、その分マイノリティーを受け入れにくい人が多い。狭いコミュニティーで成り立っているために多様性や倫理的な意識の低さが目立つ。(県内、30代女性)

【仕事・マイプロ】自分らしく活躍できない 32件

 家族の人数が減り、高齢化しているにもかかわらず、地域の役が次々と回ってくる。休みがなかなか取れないのに、その役をするために自分の時間がどんどん削られていく。若い時は子ども、行事、仕事、家事に追われ、やっと子育てが終わったら両親の介護。我慢ばかりで一生が終わってしまう気がしています。(若狭町、50代女性)

 職場では女性がお茶をくむのが当たり前、女性が気を利かせるのが当たり前。とても古い慣習があります。同じ仕事量なんだから、やれる人がやりゃええやないかと思うことも。家事や雑務は女性。嫌になる時が結構あります。(福井市、20代女性)

 正社員で働いていますが、子供がいるので病気などで急な休みが多いことや残業ができないことへの理解が低く、評価を下げられました。責任ある仕事もしてほしいと言われますが、仕事の力量以外で評価されるので頑張る気が起きません。女性が頑張れる環境ではないと思います。不幸せです。(鯖江市、30代女性)

 年功序列が強い。年齢や性別など関係なく、成果や正しさがもっと評価されないと、やる気のある若い世代が活躍しづらく、県外へ出ていってしまう。(鯖江市、20代男性)

 給料の低さ。県内どこを見ても、休みが少ない上、女だと給料も手取り10万円ほどしかないような企業ばかりです。福井県は社長の数が多いと言われる理由は、それだけものすごく小さい企業が多いだけの話。(小浜市、20代女性)

【健康】互いの弱さに寄り添えない 13件

 高校1年の長男に発達障害があります。ご近所は家庭内のことをほとんど把握していて、「親のしつけが悪いからあんな子になるんだ」などと言われたりしました。不登校になった時もすぐに周囲に広まり、とても肩身の狭い思いをしました。共働きしないと生活も苦しくて、ストレス発散の場もありません。県外から嫁に来ましたが、本当に後悔しています。(県内、40代女性)

 病気に対して正しい知識がなく、時代錯誤かと思うような差別発言が飛び交う。親ががんになり手術をしたが、知人から「がんになるやつは家系が悪い。食事が悪いからがんになる。うちはがん患者なんか一人も出していない」と言われた。いくら抗議してもそういう言葉を浴びせるので絶交した。(越前市、50代女性)

 子供に障害があり、小さいころは連れて歩くと全然知らない方が「かわいそうに、親のせいで…」と何度も言われたことがある。(福井市、40代女性)

【まちづくり】公共交通が不便 14件

 数時間に1本のバスが、土日曜には完全になくなり、県外出張が非常に不便。これが県庁所在地かとあきれる。新幹線よりも先にやるべきことがあるのではないでしょうか。(福井市、50代女性)

 公共交通機関が少なすぎて、乗りたくなくても自家用車を持たないと、通勤にすら支障を来す。(福井市、40代男性)

 交通の便が悪い。鉄道は県の真ん中辺りを縦断しているだけ。バスも最寄り駅まで30分ほどで500円かかる。自家用車の生活が前提になっている。良い店は県内にたくさんあるのに、車でしか行けないし、偶然に見つけることも難しいから、もったいない。(越前町、20代女性)

 未来の幸せアクションリサーチ 福井新聞の創刊120周年記念の取り組みの一環で3月に始動。福井県在住・出身者から寄せられた約千件の「幸せ」を基に、県内各分野の実践者を招いたワークショップを計3回開催。幸せの指標として150項目を抽出し、AI(人工知能)で2050年の福井の社会像をシミュレーションした。結果の分析を重ね、より幸せを実感できる社会づくりのために住民ができる身近な行動「小さな幸せアクション」30項目を8月にまとめた。
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