「不幸せ」の項目

「不幸せ」回答者の年代・性別

 福井新聞と日立京大ラボの共同研究プロジェクト「ふくい×AI 未来の幸せアクションリサーチ」で、「幸福度日本一」の福井の暮らしで感じる「不幸せ」を募ったところ、母として、妻として感じる負担の大きさを多くの女性が訴えた。3世代同居率が高くて共働きがしやすいという「福井型ライフスタイル」は高い幸福度の象徴とされているが、その家庭を支えている女性の実感に目を向けると、実は多くの「不幸せ」を抱え込んでいるのが見てとれる。

 「不幸せ」の募集は7~9月に行い、255人から有効回答を得た。回答者の7割超が女性で、年代は30、40代が中心だった。これに先立ち調査した「幸せ」募集では男女比がほぼ同率。「不幸せ」は女性の訴えが際立った。

 回答内容は、「幸せ」の分析で設定した▽家族・友人▽食と農▽健康▽時間の使い方▽仕事・マイプロ(マイプロジェクト=自分なりの活動)▽自然▽まちづくり▽学び▽文化―の九つの分類に照らして類型化。10項目程度の「不幸せ」に整理することができた。

 女性関連で最も目立ったのが、「母親の負担が大きすぎる」(分類「家族・友人」)で62件。当たり前のように家事をこなし、子育てを担い、夫や義父母を世話し、家計も支える―。女性が負う役割の多さが、福井の社会が成り立つ前提となっていることへの根深い不満が表れた。一方、男性側からその不幸せを捉えた声は、ほとんどなかった。

 狭すぎる地域社会、密度の濃すぎる人間関係を不幸せと感じる人も多く、「地域コミュニティーに閉塞感(へいそくかん)」(分類「まちづくり」)との項目に37件が当てはまった。近所や親戚の人の目が常に近くにある環境に、息苦しさを訴える声が相次いだ。

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 福井新聞の創刊120周年に合わせたプロジェクト「幸せアクション」では、読者の皆さんの声を基に、幸せを実感できる社会像を探っています。「不幸せ」募集はその手掛かりとするためで、寄せられた切実な痛みや悩み、生きづらさは、私たちみんなが共有すべき課題です。「幸福度日本一」に潜む「福井人の不幸せ」を見つめ、目指したい社会の姿を考察します。

【家族・友人】母親の負担が大きすぎる 62件

 福井では持ち家が当たり前。車は1人1台。購入費や維持費がかかりすぎる。そのために夫婦共働きをしているのでは? 女性ばかりが忙しい目にあい、義父母も夫もそれが当たり前だと思っているし、そう思い込まされている女性が多い。(福井市、40代女性)

 「どこが幸福度1位なんだ? 誰の基準? 誰が決めた?」と不快に思います。子育て世代に優しい社会なんて、夢物語で、現実は嫁もフルタイムで働かないとやっていけない男性の低賃金。フルタイムで働きたいが、子どもの塾の送迎は誰がする? 終わりのない家事は誰がする? 結局、嫁はやりたい仕事も犠牲にし、家族のため、子供のためにやりたくもないパートの仕事を選ぶことになり、お金のために身を粉にして毎日働き続ける。(敦賀市、40代女性)

 「女は黙って家のことをし、男の決定に従え」というのでは、社会のあるべき形にはならない。田舎の居心地の悪さに若い女の人は我慢できないだろう。逃げ出すだろう。結婚を選ばないだろう。家制度がまだ残っている。長男だからと家を継ぐ、親と同居する。仕事するのは当然。家事も当然。近所・親戚付き合いもおろそかにできない。人の目を気にして「よい嫁」を演じていて、幸せを感じられるだろうか?(越前市、70代女性)

 福井の嫁には、自分の時間がない。嫁の立場の友人たちを誘うと度々耳にする「主人に聞いてから返事する」に違和感。なぜ、自分のやりたい事や予定を優先できないのか、本当に不思議で仕方がない。彼女たちには弾ける笑顔がない。多くは常勤で仕事もしているし、日常生活に疲れている。(福井市、40代女性)

 義父母の介護は当たり前、義父の姉弟、小じゅうと家族の面倒も嫁の仕事。正社員で働き、家事、育児は全て嫁の仕事。この考え方が当たり前になっている。地域の行事に参加しないと非難され、わざわざ区長から呼び出しされる。どの地域の家庭も閉鎖的で円満を装っているようにしか思えない。(勝山市、50代女性)

【まちづくり】地域コミュニティーに閉塞感 37件

 何年たっても県外から来た人間はしょせんよそ者で仲間には入れてくれない。特に誰かの立場を脅かす存在になると徹底的に排除される。陰湿、壮絶ないじめが繰り返され、誰も助けようとはしない。(福井市、60代男性)

 自分で直接語ったわけでもない相手が、私の個人的事情に詳しいことに激しい嫌悪感を抱いた。車種やナンバーを覚えられ、「〇〇ちゃんこないだ〇〇にいたでしょ? 車見たよ~」などど耳を疑うようなことを平然と言ってくる。(県外在住、20代女性)

 無駄に地域のつながりが強い。世間が狭く通ってる学校や就職先が周りに筒抜けになるのが不快。うわさ好きの年寄りが多く、ジロジロ見られる。近所の人の動向をチェックしている。(坂井市、10代性別無回答)

 どんなに頑張っても親族経営の会社では評価されない。「ガラスの天井」が福井では当たり前にどこにでもあって、それがどうした? くらいの感覚なのが驚き。(越前市、40代女性)

 人と人との距離が近すぎる。以前の職場では「彼氏はいないのか」「結婚はまだか」とプライベートに踏み込んでこられた。アットホームなのは良い点ではあるものの、窮屈な感じがして私には合わなかった。だから福井を出ました。(県外在住、30代女性)

 未来の幸せアクションリサーチ 福井新聞の創刊120周年記念の取り組みの一環で3月に始動。福井県在住・出身者から寄せられた約千件の「幸せ」を基に、県内各分野の実践者を招いたワークショップを計3回開催。幸せの指標として150項目を抽出し、AI(人工知能)で2050年の福井の社会像をシミュレーションした。結果の分析を重ね、より幸せを実感できる社会づくりのために住民ができる身近な行動「小さな幸せアクション」30項目を8月にまとめた。
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