【論説】香港区議会選挙は民主派が8割超の議席を獲得し圧勝した。香港の民意は香港政府と中国の習近平(しゅうきんぺい)指導部に「ノー」を突きつけた格好だ。香港政府が民主派に譲歩姿勢を見せなければ、デモはさらに過激化する恐れもある。ただ、習指導部には、香港政府に国家分裂行為などを禁じる国家安全条例を制定させる動きもあるとされ、デモへの弾圧を一層強める可能性がある。

 折しも、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、中国政府が新疆ウイグル自治区でイスラム教少数民族ウイグル族らを大規模システムで監視、恣意(しい)的な拘束や施設への大量収容など人権侵害を裏付ける文書を入手した。日本を含めた国際社会は香港の民意を後押しし、人権弾圧をやめるよう中国に強く働き掛ける必要がある。

 香港区議会は基本的に立法権はなく、地域課題について政府に提言する諮問機関的な役割を持つにすぎない。それだけに、これまで有権者の関心は高いとはいえず、資金力のある親中派が約7割の議席を占めてきた。しかし、今回は香港政府による逃亡犯条例や覆面禁止法発令、実弾発砲への怒りとともに、習指導部が香港に高度の自治を保障する「一国二制度」を形骸化させているとの民意を直接反映した格好だ。

 とりわけ、覆面禁止法については香港の裁判所が憲法(香港基本法)に反すると断じたものを、中国政府が「(基本法の解釈権を持つ)全国人民代表大会常務委員会の権威への挑戦」と批判。「司法の独立」を無視したともいえる強硬姿勢を示したため、民意は一層反発を強めた。香港の「中国化」を拒む抗議活動は今後も収まる見通しはない。

 一方で、6月9日の大規模デモを皮切りに、抗議活動は5カ月半あまり続いており、香港経済の疲弊は際立つ。観光客は前年比で3割を超えるマイナスで、国内総生産の実質成長率は2008年のリーマン・ショック時に匹敵する落ち込みという。福井県内をはじめ、数多くの日本企業も進出しており、その4割弱が業績悪化にデモの影響があるとしている。米中貿易摩擦などにより減速する中国経済にとって一層のマイナス材料だろう。このまま強権発動を続ければ、さらなる影響は避けられない。

 米国議会の上下院は、中国が一国二制度を守っているか、米政府に毎年検証を求める「香港人権・民主主義法案」を可決するなど中国への圧力を強めている。日本政府は来春、習国家主席を国賓として招く予定だが、香港情勢などを踏まえ批判の声が広がってきている。日中関係が改善基調にある今こそ、人権や法を重視し、対話にかじを切るよう求めるべきではないか。

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