【越山若水】「初霜の野の空青く雲を生む 本多柳芳」。福井市できのう初霜が観測された。くしくも二十四節気で冬の訪れを知らせる「小雪」に当たり、最低気温は今季最低の3・7度だった▼本格的な寒さや降雪はもう少し先とはいえ、鮮やかに色づく山々の紅葉も一枚一枚と散り始め、近づく冬の気配に寂しさを覚える。初霜の便りを耳にして思い出すのは、幕末の福井藩士で幕政の改革や開国論を唱え、わずか25歳で生涯を閉じた橋本左内のことである▼安政の大獄で処刑された左内は「獄中の作」と題する漢詩を詠んだ。いわば辞世の句で、山本周五郎の小説「獄中の霜」にも描かれた。「苦冤(くえん)洗い難く恨み禁じ難し/俯(ふ)しては則(すなわ)ち悲傷し仰いでは則ち吟ず/昨夜城中霜始めて隕(お)ち/誰か知らん松(しょう)柏後凋(はくごちょう)の心」▼無実の罪を晴らせず痛恨の思いを禁じ得ず。ただ悲嘆に暮れ呻吟(しんぎん)するばかりである。きのうは江戸にも初霜が降りただろう。寒くても凋(しぼ)まない松柏のごときわが心を誰が知ってくれようか…。国の将来を思いやる熱意も実らず、道半ばで世を去る無念がにじんでいる▼最近のニュースに目をやると、国会は「桜を見る会」における安倍晋三首相らの“私物化”で紛糾している。福井県庁では関電役員の金品受領と同じ構図の問題が判明し、常識の欠如をさらけ出した。左内の大志に比べてあまりにちっぽけで寂しい。

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