【越山若水】勝山市で見つかった骨格化石が学名が付いた鳥類として国内最古で、始祖鳥に次いで原始的な新種との発表があった。県立恐竜博物館で公開中の化石を見学したが、驚いたのは研究方法だ▼骨の化石は硬い岩に包まれ取り出すと破損の恐れがある。そこで岩に入ったままCTスキャンして3次元化し骨格復元模型や生体復元図を制作した。デジタル技術が、鳥類進化の研究に大きな役割を果たした▼こうした技術が存在しない明治時代に、貧弱な顕微鏡で植物進化に関する世界的な発見をした人物がいる。福井市出身の植物学者平瀬作五郎だ。1896年、世界で初めて、イチョウに精子があることを発見した▼平瀬はもともと研究者ではない。画工として帝国大(現東京大)植物学教室に採用された。福井藩校で米国人教師グリフィスから図画を習い、岐阜県の中学教師を経て帝国大に勤務した。イチョウの受精は1年のうち9月のほんの1日。いつかは分からず何日も徹夜をし、ぎんなんを採集した。平瀬の描いた観察図は実に緻密で正確だ▼イチョウの精子発見は近代自然科学の歴史上、日本人が独力で成し遂げた黎明(れいめい)期の業績といわれる。学術界最高の帝国学士院恩賜賞が贈られた。そのメダルなどの資料が県に寄贈され、県教育博物館で公開中だ。明治と令和。手法こそ違え、謎に挑むパイオニア精神が科学の扉を開く。

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