【論説】安倍晋三首相の通算在職期間がきょう、2886日に達し、桂太郎元首相と並び憲政史上最長となった。ただ、最長政権にふさわしい実績があったかは疑問符がつきかねない。内政、外交など道半ばの課題が山積しているからだ。

 長期政権だからこそ完遂できるテーマがある。吉田茂元首相はサンフランシスコ講和条約を結び、日本を高度経済成長期へといざなった。佐藤栄作元首相は沖縄返還を実現させた。安倍首相にはこれらに比肩できるものがあるだろうか。

 過去を振り返ると、特定秘密保護法や安全保障関連法、「共謀罪」法など国論を二分する法案を強引に成立させてきた。一方で、身内や関係者を優遇したり、官僚に忖度(そんたく)させたりした疑惑のある「森友、加計学園問題」は今も国民が納得したとは言い難い。

 首相は第2次政権以降、衆参各3回の選挙で6戦全勝と無類の強さを発揮している。アベノミクスや1億総活躍社会、全世代型社会保障など選挙のたびにキャッチフレーズを掲げてきた。ただ、実現したか分からないうちに次の看板をぶち上げる姑息(こそく)さが透ける。

 ことあるごとに「悪夢の民主党政権」を繰り返し、自民党政権の「安定」を強調。問題が起きれば「真摯(しんし)かつ丁寧に」と述べるものの、最近では野党の予算委員会開催要求に応えようともしない。1強多弱を追い風に、内閣支持率も一定の水準を維持していることが、首相の強気の姿勢につながっているのだろう。しかし、支持する理由のトップは「ほかに適当な人がいない」である。

 菅原一秀前経済産業相や河井克行前法相の辞任に際し、首相は「自ら説明責任を果たしていくと考える」と述べただけ。2人は辞任後、一切発言の場に出てきていない。萩生田光一文部科学相の「身の丈」発言が反発を浴び、大学入学共通テストでの英語民間試験の導入を延期せざるを得ない事態になったが、首相は萩生田氏を続投させている。

 「桜を見る会」や前日の夕食会については、首相自らの問題であるのに、ぶら下がり会見でいきなり「全ての費用は参加者の自己負担で支払われている」などと弁明。だが、証拠書類はないとし、予算委での説明も「国会がお決めになること」と逃げの姿勢だ。

 与党の追認機関化や、内閣府人事局による省庁幹部の人事権掌握など、1強支配による弊害が目に余る。次世代につけを回す財政出動の肥大化も見逃せない。首相は宿願の憲法改正にまい進する構えだが、国民が望む政策の優先順位を見極め、幅広い合意形成にこそ努めるべきだ。それには国会論戦から逃げず、十分に説明責任を果たすしかない。

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