「花筐語り部の会」の案内で花筐公園を散策する観光客=11月11日、福井県越前市粟田部町

 継体天皇ゆかりの薄墨桜など多くの伝承を持つ福井県越前市粟田部町の花筐(かきょう)公園が今、紅葉の名所として関東からバスツアーが連日訪れるなど全国的に注目を浴びている。「桜だけでなく紅葉も」と、地元住民の観光会社への働きかけなどが奏功したもので、春に新体制となった花筐語り部の会も大忙し。来場者の紅葉に感動したという声が地元に伝わり、活動にまた弾みがつくという「正の連鎖」も生まれ、地元のシンボル的存在として親しまれる歴史と由緒ある公園を起点に地元が活気づいている。

 ■「桜に負けない」

 「誰にも注目されなかった公園の紅葉。今や北陸一の紅葉スポットになったと胸を張れる」。長年公園の清掃などを行ってきた「花筐公園保勝会」の小林勝三さん(80)は感慨深そうに振り返る。花筐公園はもともと、1844年に奈良県から数十本の桜を移植して開園。昭和初期には桜の名所として有名になった。

 春の桜の陰に隠れがちな紅葉もアピールしようと「第1回もみじまつり」が開かれたのは2000年。そのころから紅葉の植樹や観賞コースを整備するなど地元住民による「紅葉のPR」が始まった。現在は約1500本の紅葉が公園を赤く彩る。

 ■生まれた協力体制

 売り出しの転機になったのは開園170年を迎えた14年ごろ。節目に合わせて観光強化の機運が高まる一方、保勝会の会員が高齢化し会が存続危機に陥った。打開策として保勝会に花筐地区自治振興会が協力する体制が敷かれた。

 住民たちは、市観光協会や市内の食の体験施設と連携し旅行代理店に花筐公園を売り込んだ。今年4月には新しい「花筐語り部の会」が誕生。60~80代の会員11人による新体制となり、花筐自治振興会が主催する春の「はながたみまつり」からツアーガイドをスタートさせた。語り部の会が地区の歴史文化を学ぶ勉強会を開くなど、後進を育成する体制も整えた。

 ■「どこよりもきれい」

 11月に今季の紅葉が始まってからほぼ連日、関東圏からバスツアーが訪れる。期間中はバス41台、計約1600人以上が来園する見込みだ。11日に訪れた40人の観光客は、語り部の会の栗林謙太郎会長(83)ら7人がガイドを務め、室町期の謡曲に由来する公園名や、園内の見どころを紹介した。

 東京から友人と訪れた女性(68)は「ツアーで訪れたどこの場所よりも紅葉がきれいだった。また訪れたい」と帰り際に公園を名残惜しそうに振り返った。

 ■公園は地元の宝

 「地元が動かなければ観光客は来てくれない」。花筐公民館館長の小柳和則さんは、地元自治振興会の協力で語り部の会が新しくなり、生まれた刺激が観光客を呼ぶ原動力になったと話す。

 語り部の会の栗林会長が「最近は少しずつ知名度も上がってうれしい」と話す通り、呼んだ観光客がもたらした刺激が、地元をさらに刺激し活性化させるという動きにつながっている。

 「公園無くして粟田部はない」「公園は地元の宝」と、住民は声をそろえる。地元のシンボルに自分たちが観光客を呼び込んでいるという「誇り」が、住民の活動をさらに後押ししている。

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