【論説】厚生労働省が9月に公表した公立・公的病院の再編・統合リストが今なお、波紋を広げている。名指しされた病院や自治体関係者は無論、通院、入院する患者にとっては、頼みの綱としてきた病院がなくなったり、遠い場所に統合されたりすることへの不安は計り知れない。

 一方で、膨れ上がり続ける医療費を考えれば、何らかの方策は避けて通れない。問題なのは、厚労省が診療実績などを基に、唐突に強制力のないリストを発表したこと。検討を促す狙いというが、命や安心安全に関わる課題であり、地域ごとの個別事情を十分に配慮すべきだ。

 ■県内4病院が対象■

 再編・統合が必要と名前が上がったのは、全国1455の公立病院や日赤などの公的病院のうち計424病院。14施設がある福井県内では、あわら市の国立病院機構あわら病院、坂井市立三国病院、越前町の織田病院、高浜町の若狭高浜病院の4施設が対象となった。

 厚労省は2017年度のデータを基に、重症患者向けの「高度急性期」、一般的な手術を行う「急性期」に対応できる病院を対象に、がんや救急医療といった9項目の診療実績と、「車で20分」の近隣に似たような機能を持つ病院があることを判断の材料にしている。

 県内の4病院が再編・統合のリストに挙がったのは、急性期患者の診療実績が乏しいためだが、4病院は回復期の医療がメイン。「急性期を中心に考えるのはおかしい」などと反発が出たのも当然だ。

 ■膨れ上がる医療費■

 人口減少と少子高齢化に伴い若い世代に多いとされる急病や大けがの手術で入院する高度急性期、急性期のベッドの必要性は低くなる一方で、脳血管障害や骨折などの手術後のリハビリを担う「回復期」のベッドへのニーズは高まるとされる。

 こうした流れを受け、国が法律に基づいて都道府県の医療体制の見直し策定を求めたのが「地域医療構想」だ。全国の病院のベッド数は18年で約125万床。構想では25年に必要なのは約119万床で削減可能とみている。

 ところが、全国の病院、特に公立・公的病院からの報告で消極姿勢があらわになり、再検討を促すためにリスト公表に踏み切った格好だ。背景には医療費の膨張がある。18年度は約42兆円だが、団塊の世代全員が後期高齢者となる25年度は50兆円台に達する見通しという。再編・統合で医師を集約できれば働き方改革にも資するとしている。

 ■住民本位の熟議を■

 安倍晋三首相は先月28日の経済財政諮問会議で「地域医療構想の実現は不可欠だ」と病院の再編・統合に意欲を示した。一方、今月11日の全国知事会議で「(リスト公表で)混乱が広がっている」と指摘され、「医療は住民の関心事だ」と地域の実情に配慮する考えも明らかにした。

 実情にどう配慮するのかは見えない。山間部やへき地、離島などでは経済合理性では図れない公的病院ならではの役割がある。それを顧みず、再編・統合を進めれば、命の切り捨てにもなりかねない。

 厚労省は、来年9月までに結論を出すよう都道府県を通じて対象病院に要請するとしている。一方で、民間病院との整合性や再編に伴う財政支援など残された課題も多い。結論を得るまでの過程では地元の医療関係者に加え、住民代表も交えた会議で協議することになっている。地域医療の将来像だけに住民本位の熟議が求められる。

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