移植のためクレーン車でつり上げられるべにやのシンボル「シイの木」=11月11日、福井県あわら市温泉4丁目

 2018年5月に全焼した福井県あわら市温泉4丁目の老舗旅館「べにや」敷地で11月11日、奇跡的に焼け残った同旅館のシンボルのシイの木の移動作業が行われた。年明けから本格化する「新べにや」の建設工事に向けたもので、奥村隆司社長(52)は「(再建が)いよいよ始まるんだという感じでうれしい。これまで支援してくださった多くの方に恩返しできるよう立派な旅館にしたい」と決意を新たにしていた。

 樹齢250年のシイの木は1956年の芦原大火後の再建時に同市本荘地区からべにやの玄関前に移植。旅館の象徴として長年、宿泊客を出迎えてきた。18年5月の火災ではいずれも木造2階建てで、国登録有形文化財(建造物)の本館、中央館、東館の計約3100平方メートルを全焼したなか、シイの木は奇跡的に災禍を免れた。「残ったことには意味がある。生かしたい」(奥村社長)と18年秋に焼失前から行っていたシイの木のライトアップを復活させ、再建に向け動いてきた。

 この日は、奥村社長や従業員らが見守るなか、午前9時50分ごろからクレーンで木がつり上げられ、西側へ約3メートル移動した。

 現在は「新べにや」の実施設計がほぼ固まり、年明けにも着工する予定。同旅館には4本の温泉が通っていたが、このうち1本は老朽化や火災の影響で湯量が減少していたため、新たに掘ることが決まっている。福井県の許可が下り次第、11月中にも「交換掘り」を行う。

 「新べにや」は「和風」のコンセプトはそのままに、以前の23室からは減るものの、月が見えたり庭が楽しめたりと、異なる世界観を持つ17室を設ける計画。平屋建てで全室温泉付きとする予定。奥村社長は「待ってくれている人がたくさんいることがありがたく、励みになっている」と話していた。

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