【論説】温室効果ガスの排出増による地球温暖化が世界各国に甚大な被害をもたらしている中、世界第2位の排出国として無責任なだけでなく、自国民にとっても不利益をもたらしかねず、理不尽極まりない選択と言わざるを得ない。

 トランプ米政権が温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を国連に通告した。大統領選の看板公約として2017年6月に離脱方針を表明。今回の通告で公約実現に突き進んだ格好だ。実際の離脱は1年後の11月4日になる。再選を目指す大統領選は前日の3日の予定だ。

 公約の断行はコアな支持層にアピールする狙いがあるのだろう。一方で、米大学の18年の世論調査では残留を支持する米国民は77%に達し、トランプ大統領の共和党の支持者でも60%に上る。大統領選が米国民の意思発露の場になる可能性もある。

 米国内では、州や企業レベルで温暖化対策が進み、協定離脱でも影響は少ないとの見方がある。ただ、トランプ政権は、自動車の排ガス規制を連邦政府よりも厳しくしようとする州に対して、規制権限を取り消す方針を表明するなど、足を引っ張るかのような動きを見せている。

 パリ協定は、今世紀末の気温上昇を「2度より十分低くし、1・5度に抑えるよう努力する」を目標に掲げる。協定で各国が約束した排出削減が実現したとしても目標達成はおぼつかないのが現状だ。

 国連機関などによると、大規模自然災害は1970年代まで年間100件程度だったが、2000年代以降は400件を超える年が目立つとしている。日本を含め、豪雨や洪水、異常高温は確実に増えており、温暖化の影響は極めて高い。

 米国も大型ハリケーンなどの頻度は増している。トランプ氏は17年に、ハリケーン「マリア」がカリブ海の米自治領プエルトリコを直撃した際、対応の遅れを強く批判された経緯があり、温暖化の脅威を身をもって知ったはずだ。

 米国の協定離脱で存在感を増すのが中国だ。途上国をまとめる立ち位置にあり、電気自動車など成長著しい環境関連産業のビジネスチャンスと捉えている節もある。米国にとっては面白くない事態ではないか。

 トランプ政権の行動に、日本の政権幹部は一斉に「残念だ」の声を上げたが、翻意を強く働き掛けるべきだ。そのためには、技術革新や、再生可能エネルギーの拡大、石炭火力発電の縮小・廃止など、脱炭素社会の実現へ大胆な施策を進め、米国を説得する手本を示す必要がある。「翻意は不可能」(小泉進次郎環境相)などと言っている場合ではない。

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