【越山若水】福井市立郷土歴史博物館が刊行している「福井城下図集」が歴史ファンの間で静かなブームとなっている。江戸時代の城下絵図と現在の市街地図を重ね合わせたもので、持ち歩けば手軽に現在の町並みから江戸時代の福井城下町の雰囲気に浸ることができる仕立て▼今年3月に第3版が発刊された。第1版が2011年5月、第2版が同年7月だった。第3版は特にJR福井駅周辺にハピリンがお目見えしたことなど中心市街地が変わったためだ▼福井城下図は松平文庫に収められている1803(享和3)年作成の「福井分間之図」を原図としている。これに重ね合わせた市街全体地図に「人気のある場所を重点的に拡大し便利にしたかった」(印牧信明学芸員)ため福井城跡、JR福井駅周辺、九十九橋付近の3種類からなる▼図集のヒントとなったのは、先頃亡くなった郷土史家、松原信之さんが1957年に出版した「若越城下町古図集」だった。福井藩関係の大絵図を実用化するために縮小し、一方で当時の市街地図も精査して、重ね合わせを思い立った▼松原さんは、古図集に添えた自序に戦災、震災によって近代都市に生まれ変わったことは一面喜ばしいが歴史のある名所、史跡、神社、仏閣が風雅さを失ったための一抹の寂しさからだったと記している。若き素朴な思いとはいえ、後の大家の原点だったと思える。

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