住宅密集地の木に居座ったクマ=10月26日、福井県勝山市芳野町1丁目

 福井県内でクマの出没が相次ぐ中、勝山市では10月以降、目撃・痕跡情報が100件を優に超え、5人が負傷した。市街地での出没が目立ち、居座りも起きた。餌となる木の実が凶作、不作の中、同市で出没、被害が集中するのはなぜか。現場を見た関係者は山と市街地が近接する地理的条件、住宅街の柿に誘引される状況、人を怖がらない“新世代”のクマといった複数の要因を指摘する。

⇒柿の木に居座ったクマの動画

 「勝山市は市街地と山が接している。山際の集落とつながり、緩衝の田んぼや畑、林などが少ない」。山岸正裕市長は11月5日の記者会見で、クマが市街地に出没する要因に山との位置関係を挙げた。

 実際どうなのか。同市在住で元県自然保護センター所長の松村俊幸さんは、市街地周辺の山は一部せり出す「半島形」になっており「山を下りてきたクマがそのまま市街地に出やすい」と解説する。

 出没が相次ぐ長山公園周辺と沢町、芳野町の住宅密集地との位置関係がそれに当てはまり、けが人が出た旭町も山からの距離が比較的近い。

 県自然環境課の西垣正男主任も「(山際から)いきなり市街地になるため、地理的に出没しやすいのではないか」と指摘。隣の大野市も山に囲まれているが、広い盆地と山際から市街地までの距離が長い点が異なるという。

 さらに「クマは人を怖がるのに、それでもまちなかに来るのは魅力的な場所があるから」。目当ては住宅街などにある柿の実。「目撃情報や人身被害があった現場近くには必ず柿の木がある。クマは鼻がいいので熟した柿のにおいなどに誘引される」として早急な収穫、撤去を促す。

 10月下旬、芳野町1丁目の住宅街にある柿の木で見つかったクマ2頭が隣の杉の木に居座り続けた事例も当てはまる。クマは山奥や森の中では昼行性だが、人がいる集落や市街地では夜行性になる傾向があり、市などが「夕方以降から早朝にかけての外出をできるだけ控えてほしい」と求めるのはそのためだ。

 「クマ自体が人を怖がらなくなっている」と話すのは、県猟友会勝山支部の上弥吉支部長。昨夏ごろ、市内の宿泊施設そばにいたクマ2頭を建物上から見た際、親グマはあおむけになって子グマに乳を与えていた。「こちらに気づいているのに全く構わず。人は怖いと知らないまま育ったクマが山里や市街地に出てきている可能性もある」とみる。

 松村さんも「市街地を怖がらない、人慣れしたクマが増えている」と指摘。10メートル四方ほどの茂みがあればクマは身を隠すことができ、「近くに柿の木や栗の木があるやぶには近づかないでほしい。11月下旬までは警戒が必要」と話す。上さんは鈴をつけ、ラジオを鳴らしてもクマは近くに潜むだけの場合があり「決して安全ではないことを知ってほしい」と呼び掛けている。

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