【論説】衆院予算委員会の集中審議が約8カ月ぶりに開かれた。焦点の一つは、週刊誌に公選法違反の疑いを報じられ、辞任した菅原一秀前経済産業相と河井克行前法相に対する安倍晋三首相の任命責任だったが、国民の信頼回復に資する中身のある答弁はなかった。

 首相は「任命者として責任を痛感している」と陳謝した。だが具体的な任命責任の取り方については「行政を前に進めることに全力を尽くし、国民への責任を果たしていく」との答弁を何度も繰り返しただけ。

 2人は辞任後、指摘された疑惑に関して事実関係などを説明していない。それなのに首相は「今後、自ら説明責任を果たしていくと考える」と、他人ごとのような答弁に終始した。

 菅原氏は選挙区内の有権者に秘書を介して香典を渡し、河井氏は7月の参院選で当選した妻の運動員に法定の倍の報酬を支払った疑いが持たれている。かつて有権者に名前入りの線香セットを配ったとして議員を辞職をしたケースもある。公選法違反なら閣僚の辞任だけではなく、衆院議員も辞職すべき事案だろう。

 野党は2人の参考人招致を要求したが、与党側は「前例がない」と応じなかった。安倍首相は自民党の総裁でもあり、両氏に国会の場で説明責任を尽くすよう促すのは党の最高責任者の責務だ。第2次安倍内閣でカネに絡む事案や失言などで辞任した閣僚は10人に上る。そのたびに首相は「任命責任は私にある」と繰り返してきたが、真摯(しんし)に反省しているとは言い難い。

 閣僚の辞任後も内閣支持率が一定の水準を保っていることが強気の姿勢につながっているようだ。首相の通算在職日数は今月19日に歴代最長に並ぶが、長期化で緊張感を失ってはいないか。疑惑への甘い対応は国民の不信を増幅し、政権の基盤をも揺るがすだろう。

 焦点のもう一つは、大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入見送りだ。集中審議で、野党は受験生に「身の丈に合わせて」と発言した萩生田光一文部科学相の辞任を求めた。これに対して首相は「指摘された課題を克服できるよう、しっかりと検討させたい」と、続投させる考えを示した。

 民間試験が経済・地域格差という問題を抱えることは以前から指摘されていた。「身の丈」発言は「教育の機会均等」という教育行政の基本をなおざりにしたものであり、土壇場での延期判断で受験生らを振り回した責任も重い。

 一方、野党が民間試験の導入決定の経緯をただす中で、不可解な点が浮上してきた。公平性を担保すべき入試制度の根幹がゆがめられた可能性はないのか、徹底解明が求められる。

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