東山天皇の即位の礼と酷似した儀式の様子が描かれている「源氏物語扇面貼付屏風」の扇絵

 福井県越前市武生公会堂記念館で現在展示されている、源氏物語の場面を描いた江戸時代の「源氏絵」の屏風(びょうぶ)に、皇位継承に伴う「即位の礼」とみられる場面が描き込まれていることが10月31日までに、同館の調査で分かった。10月22日の「即位礼正殿の儀」で、天皇陛下がお言葉を述べられた「高御座(たかみくら)」のような玉座も確認できる。同館によると、源氏物語の中に即位の礼の直接の描写はなく、源氏絵の題材とされることは珍しいという。

 屏風は、江戸後期の作とされる「源氏物語扇面貼付屏風」(個人蔵)。6曲1双(各縦171センチ、横370センチ)に計24枚の扇が貼り付けられ、うち21枚に源氏絵が描かれている。

 同館では現在、最古の源氏絵「国宝源氏物語絵巻」を再現した木版複製を紹介する企画展を開催中。屏風は10月16日からの会期後期の目玉として今回初披露された。展示に先だって同館の学芸員が扇の源氏絵を調査。18枚は題材となった源氏物語の各場面が判明したが、残る3枚は特定に至らなかった。

 同館の三好修一郎館長が関連資料を探す中で、場面不明の扇絵1枚とよく似た構図を「東山天皇御即位式・霊元上皇御譲位行列図屏風」(皇學館大神道博物館寄託)の右隻に発見。同屏風は江戸時代の1687年に行われた東山天皇の即位の礼が詳細に描かれている。その中の高御座や長い柄のうちわのような道具を持った女官たちの様子が、扇絵とそっくりだった。

 扇面貼付屏風の源氏絵はすべて、東山天皇の即位後に描かれている。三好館長は「扇の絵は東山天皇即位の屏風のような資料を参考にして、源氏物語に登場するいずれかの天皇の即位の様子を描いたものだろう」と推測する。

 源氏物語の中では、天皇は桐壺帝から朱雀帝、冷泉帝、今上帝へと代替わりしていくが、即位の礼の場面に関する直接的な記述はない。同館が確認する限り、他の源氏絵の中に即位の礼を描いた場面は見つかっていない。三好館長は「扇絵の作者は不明だが、原作にない場面をどうして描こうと思ったのか、そこが興味深い」と話す。扇絵が源氏物語内のどの天皇の即位を表現しているかも分かっていないが、ほかの扇絵との関連などを詳しく調べれば、特定できる可能性もあるという。

 市武生公会堂記念館の企画展「王朝の美を求めて―木版本国宝源氏物語絵巻と装飾料紙」は4日まで。入館料は一般200円、高校生以下無料。最終日の4日は「関西文化の日」の取り組みとして入館無料となる。

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