【論説】来年度から始まる「大学入学共通テスト」で導入される英語の民間試験を巡り、対象となる高校2年生ら学校現場の不安は広がるばかりだ。11月1日から受験に必要な共通IDの申し込みが始まるというのに、情報がはっきりしないまま、手続きだけが先行している感は否めない。

 加えて、所管する萩生田光一文部科学相が「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」と教育格差を容認するかのような発言をした。「説明不足の発言だった。おわびしたい」と述べたが、受験生や教育関係者らの憤りや怒りは収まらない。「受験生第一」には程遠い状況であり、延期も視野に入れるべきだ。

 実生活で使える英語を掲げる新しい入試制度では「読む・聞く」に加えて「話す・書く」ことを重視。「英検」や「GTEC」などの民間試験を活用することを目玉にした。だが、参加を予定していた「TOEIC」が7月に突如辞退を申し出た。

 受験生は残る6団体、7種類の試験から選択、来年4月から12月の間に2度まで受験できる。ここに来て、活用される試験の実施内容などが徐々に見えつつあるという。ただ、申し込んでも既に満席だったり、試験によっては希望する時期や場所で受けられる見通しが立っていなかったりと依然混乱は続いている。

 文科省によると、民間試験の結果を少なくとも一つの学部や学科で利用するとした大学は、四年制の70・8%、短大の29・5%。しかし、同じ大学でも学部や入試方法で異なる民間試験を利用するケースがあるとされ、これも受験生を悩ませているという。

 利用中止を訴える大学教授らは「異なる複数の試験結果を比較できない」「トラブルや不正に試験の実施団体が対応できるのか」といった懸念を示している。こうした問題点が解消されたとは言い難く、そもそも、大学入試を民間に丸投げすること自体に無理があるのではないか。

 受験料が2万5千円を超える試験や、会場が都市部に限られる試験が多いことなど、経済格差や地域格差の問題が指摘されている。萩生田氏の発言は、都市部の裕福な家庭の生徒が腕試しに2回以上受験するなど回数に差が出ることを認めた上でのものだ。

 以前には「初年度は精密さを高めるための期間」などと、受験生を壮大な実験にさらすかのような発言もしている。今回の「身の丈」発言で現場の不信感は拭いようのないレベルにまで来ている。大学入学共通テストは民間試験を利用せずとも可能だ。文科省は受験生や高校側の不安をどう払拭(ふっしょく)するのか。混乱解消へ一刻も早く対応すべきだ。

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