【論説】大都市に本社を置くIT企業などが地方に出先拠点「サテライトオフィス」を開設する動きが広がっている。多様な働き方への対応や人材確保を進める企業と、地域活性化や新たな人の流れを創出したい地方自治体の思いが一致した形だ。「幸福度日本一」の住みよい環境を生かして、福井県内でも積極的に取り組む市町が現れている。

 サテライトオフィスは本社から離れた地域に開設される小規模な事務所。支社、支店がその地域でしかできない業務を担うのに対し、本社と同じ業務を行うテレワークの一種ともいえる。

 通信環境とパソコンがあれば、どこでも開設できることから、事業拡大を検討するIT企業を中心に導入が進んでいる。働き方改革だけでなく、介護や育児による離職者の防止、事業継続計画(BCP)対策の面からも注目されている。

 国や地方自治体も支援に乗り出している。総務省の調査によると、地方自治体が開設に関わったサテライトオフィスの数は2018年度末時点で全国444社。12年度末の56社から約8倍に増えている。オフィス開設や運営のコストを抑えるため、生活環境が良く賃料の安い地方に対する関心は高く、福井県にもチャンスがある。

 県内ではここ数年、鯖江、坂井、大野、敦賀の各市などが、東京や大阪に本社を置くIT企業を誘致している。県内先進地の鯖江市には17年度以降に5社が進出した。企業からは「市が協力的。フォローアップもスピーディー」との声が聞かれ、高い評価を受けているようだ。

 県も独自の補助金を設けるなど、市町の誘致活動を支援する。眼鏡枠を使ったウエアラブル端末の開発などIT企業とのコラボレーションが期待できる地場産業があることや、女性の就業率が高いことなど、生活環境だけでない福井県の強みもPRしている。県は9月末までに、県単独または鯖江市と合同で首都圏の43社を訪問。このうち4社が検討を進めているという。

 23年春に北陸新幹線が敦賀まで開業すると、東京から3時間圏内になり、企業の関心は高まるはず。首都圏には県出身者が社長で元気のあるIT企業が多いことも、プラス材料になるのではないか。

 U・Iターンを希望するIT業界経験者と、サテライトオフィス開設を検討する首都圏企業とのマッチングにも県は力を入れる。住みよい環境、他県にない強み、行政のきめ細かいサポートをアピールし、県内の雇用創出につなげたい。

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