【越山若水】幕末の熊本藩士で、福井藩の政治顧問も務めた横井小楠が、福井藩士村田氏寿らに宛てた手紙が見つかったと、熊本市で小楠を研究する徳永洋さん(68)から連絡をもらった。1938(昭和13)年に刊行された「横井小楠遺稿」に掲載後、所在不明になっていた。新発見の資料ではないが興味深い内容だ▼小楠は1862(文久2)年、江戸で刺客に襲われた際、脱出して応戦しなかったことが「士道忘却」として熊本藩から罪に問われ、翌年武士の身分を取り上げられ給与も召し上げられた。熊本に帰り謹慎生活となり多額の借金を重ねた▼小楠の困窮ぶりを知り救いの手を差し伸べたのが福井藩の前藩主松平春嶽と藩士たちだった。春嶽は100両、藩士はカンパを募り50両を届けた▼手紙は67(慶応3)年1月3日付。宛名に村田ら藩士5人の名を記し「大金が飛んできて、春風が吹き起こり、堅い氷と積雪が一時に消えました」と感謝の言葉をつづっている。徳永さんは「苦しい時期にも福井藩との交流が続き、固い絆があったことがうかがえる手紙」と話す▼徳永さんは長年小楠の顕彰活動を続け、現在は熊本学園大招聘(しょうへい)教授。この手紙は関西の古美術商から購入した。これまでにも数々の資料を発見し、著書もある。今年は小楠没後150年。こうした地道な活動が、埋もれた歴史や人物像を浮かび上がらせてくれる。

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