豚コレラ感染予防のため、豚へのワクチン接種の準備をする獣医師ら=10月25日、福井県坂井市の県畜産試験場(県提供)

 豚コレラ感染予防の豚へのワクチン接種が10月25日、福井県内で始まった。“見えない脅威”と日々闘う養豚農家にとっては待望の接種。農家は「本当によかった。何とか豚を守れる」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。一方、ウイルスを媒介する野生イノシシが養豚場の周囲にいる状況は変わらず、「すべて安心とはいえない」と気を引き締める。

 「自分の豚を全部殺して埋めるなんて耐えられない。早く出荷して豚舎を空にすることも考えたが、ワクチン接種の決定を聞き、そこまで頑張れば生き残れるのではないかと思ってやってきた」。県養豚協会副会長で越前市内で豚約1200頭を飼育する時岡伸さん(66)は、感染イノシシの発見場所が徐々に自らの豚舎に近づく中、不安を抱えながら接種を待った。

 市内では7、8月に養豚場2施設で豚コレラが発生。全頭殺処分となり、経営していた農家2軒が廃業に追い込まれ、現時点で県内で豚を飼育する農家は3軒となった。「国が春の段階でワクチン接種を決断していれば県内の発生はなかったのではないか。県内産の豚を食べたい人に今後、十分に供給できないという不安を持っている」と明かした。

 豚舎近くに野生イノシシがいる状況は当面続く。国や県は感染防止に向け、引き続き養豚場での消毒の徹底を呼び掛け、イノシシの駆除などを進める。

 時岡さんは「周囲にウイルスは存在する。国の衛生管理基準を守って防疫体制を整えても百パーセントではない」と気を緩めてはいない。「飼育豚にワクチンを打ちながら、野生イノシシにもワクチン(餌)を与え、時間をかけて豚コレラを国内からなくす方向に持っていかないと安心できない。アフリカ豚コレラの防疫体制も国としてきちんとやってもらいたい」と求めた。豚コレラとの闘いは「10年、下手をすると20年ぐらいは続く」とし、ワクチン接種の費用負担は国の責任との考えを示した。

 また、福井県の独自ブランド「ふくいポーク」を扱うJA県経済連の担当者は「ワクチン接種豚の肉を食べても影響がないことは強調されてはいるが、消費者がどういう反応をするのか不安はある」と風評被害を懸念。「生産者たちは頑張っている。消費者もおいしく食べて応援してもらえれば」としている。

 県食肉事業協同組合連合会の中野直幸理事長(54)=坂井市=も「安全な豚しか出荷されない。消費者にはこれまで通り食べてもらいたい」と冷静な対応を求めた。

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