【越山若水】2008年、サトシ・ナカモトと名乗る人物がインターネット上に小論文を発表した。「ビットコイン P2P電子通貨システム」という表題で、金融工学関係者らの耳目を集めた▼2年後、あるプログラマーがピザ2枚を1万ビットコインで購入し、初めて商取引が成立した。まるでゲーム遊びのような売買であるが、翌年になると通貨自体が投資の対象となり、相場はたちまち高騰。一般市民も新しい仮想通貨(暗号通貨)に関心を示し始めた▼国家が認めた日本円や米ドルと異なり、仮想通貨はいわば無国籍のデジタル通貨。ネット決済ゆえ、遠く離れた者同士、金額の多少に関係なく、手数料も安くて済む。手軽な一方、投機の過熱やマネーロンダリング(資金洗浄)、サイバー攻撃などの懸念も多くある▼「世界史を変えた詐欺師たち」(東谷暁著、文春新書)は、仮想通貨がまだ開発途上の技術だと論評する。それを追認するように、米フェイスブックが発行を計画する仮想通貨「リブラ」に各国が待ったをかけた。システムを改善したとはいえ、なお警戒感は根強い▼さすがのザッカーバーグCEOも「米当局の認可まで発行しない」と約束。ただし世界の通貨覇権を狙う中国を念頭に「技術革新しないリスク」を強調した。仮想や暗号なんて、一般人には字面からして分かりづらい。「急がば回れ」も致し方ない。

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