【論説】日韓の両首相が会談したが、互いの主張を繰り返すなど、実りのあるものとは言い難いものだった。このまま平行線が続けば、経済的損失はあまりに大きい。

 安倍晋三首相は元徴用工訴訟問題を巡り「国と国の約束を順守することにより、日韓関係を健全な関係に戻すきっかけをつくってもらいたい」と、韓国の日韓請求権協定違反の是正を求めた。李洛淵(イナギョン)首相は、韓国は協定を守っていると応えたが、突っ込んだ話にはならなかったという。

 李氏はかつて韓国紙の東京特派員や国会議員として韓日議員連盟の副会長を務めるなど知日派だ。常々「日本との懸け橋として最善を尽くす」などと公言。政権ナンバー2による約1年ぶりの会談であり、関係改善が期待されていた。

 会談は即位礼に合わせて来日した各国要人と安倍首相のマラソン会談の一環で、わずか約20分。これでは突っ込んだやりとりは無理だろう。李氏が示した文(ムン)在寅(ジェイン)大統領の親書は「日本は北東アジアの平和のために協力する重要なパートナーだ」とし「懸案が早期に解決されるよう努力しよう」と呼び掛けているというが、当事者意識がある内容とは思えない。

 安倍首相は「両国関係は非常に厳しい状況にあるが、このまま放置してはいけない」と強調。李氏も「両国が知恵を集め、難関を克服できると信じている」と述べた。さまざまなレベルの対話を継続、加速させることでも見解が一致したとされる。

 だが、トップの考えが全く異なる状況では、外交当局間の交渉で打開につながるのは容易ではない。ここは安倍首相と文氏が互いに胸襟を開いて解決策を導き出すしかない。ただ、文氏は腹心の法相の辞任問題で支持率を落としている。来年4月に総選挙を控え反日をあおるしか浮揚策がないとの見方もあり、対話に応じるかは見通せない。

 日韓対立が両国経済に悪影響を及ぼしていることを両首脳は重く受け止めなければならない。韓国では日本製品の不買運動が続き、9月の訪日韓国人客は前年同月に比べ58・1%も減少した。発端は、韓国最高裁が元徴用工への日本企業の賠償を命じた判決にある。日本は企業に実害が出ることに猛反発した経緯があるが、既に経済や観光には大きな打撃となっている。

 安倍首相は「放置してはいけない」という以上、早急に対話の場を持つべきだ。11月上旬には東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会合、中旬にはアジア太平洋経済協力会議(APEC)が予定されている。正式な会談ではなくとも直接話をする場はある。機会を逃さず、解決方法を探ることが不可欠だ。

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