レース活動について熱く語る村田さん。多くの人が関わっているからこそ、皆がまとまる大切さを強調する(c)Koji Taguchi

 日本列島を縦断し、各地に甚大な被害をもたらした台風19号が、三陸沖の太平洋上で温帯低気圧になった今月13日夜。ラグビー・ワールドカップ(W杯)の日本―スコットランド戦が横浜市の横浜国際総合競技場で開かれた。決勝トーナメント進出の可能性がある両チームが激しくぶつかり合った一戦は、見事な戦い方を見せた日本が勝利。史上初となるベスト8入りを果たした。

 「スポーツ史上最大の番狂わせ」とも「ブライトンの奇跡」とも言われる南アフリカ戦での勝利を記録した15年の第8回イングランド大会(3勝1分け)を別にすると、これまでの出場した7大会で残した成績は1勝2分け21敗だ。これを見ても明らかなように、日本ラグビーは長きにわたって世界の壁にはね返されて続けてきた。それが、強化体制を見直すなどした結果、着実に強さを身につけたことが今回の快進撃につながっている。

 「One for All、All for One」。代名詞ともいえるそんな言葉を出すまでもなく、今大会の日本代表の姿を目にした誰しもがラグビーはチームスポーツの代表格だと感じているに違いない。

 チームスポーツと言えば、日本人が大好きなものがもう一つある。毎年正月2日と3日に開催される箱根駅伝に代表される駅伝だ。一人で走るマラソンと違い、駅伝は出場した各選手が「タスキをつなげ」なければゴール出来ない。途中、誰かが故障して走りをやめてしまえばそこで終了。だが、それをチームメートで責めるものはいない。全員がゴールを目指して全力で競技が行われる日までの道のりをともに過ごしてきたことを理解しているからだ。タスキをつなぐこの駅伝スタイルには、日本人の琴線に触れる何かがあるのだろう。

 さて、モータースポーツはどうだろう? 多くの人が個人種目という印象を持っているのではないか。ところが、実際は駅伝と共通点がとても多い。

 それを具体的に説明してくれたのは、村田久武さん。世界三大レースに数えられる耐久レースのルマン24時間で今年連覇を果たしたTOYOTA GAZOO Racingの代表だ。

 「『レースを企画する人』『マシンをデザインする人』『マシンを製作する人』『マシンを整備する人』『レース活動するためのお金を集めてくれる人』…。そして、最後にドライバーがマシンをゴールまで走らせる。このうちの誰かが欠けてもレースはできません。まさに、タスキを順番につないでいくようですよね。これがレース活動なんです」

 そう教えてくれた村田さんがさらに続ける。

 「サーキットに足を運んでくださるファンの方でも、そこまでイメージ出来ている方は少ないのではないかと思います。でも、それが実際のモータースポーツです。私たちは昨年、一昨年とルマン24時間に勝たせていただきました。そういった多くの方々の思いが勝利につながったと心から思います。レース会場には部品メーカーの方を始め、さまざまな協力を頂いた企業の方々が見学にいらっしゃいます。そして、『おめでとうございます』というねぎらいのお言葉を頂戴するのですが、私は『あなたもルマン・ウィナーで、私もルマン・ウィナーで、われわれ全員が勝ち取った勝利ですね。おめでとうございます』とお返事させてもらっています」

 「あなたもルマン・ウィナーで、私もルマン・ウィナー」

 モータースポーツ活動におけるチームスポーツという意味は、まさにこの言葉に集約されているかもしれない。もちろん、そのウィナーになるためには全員が同じ方向を向かなければ、より強く思いを持つ競合相手に負ける。自分でやるべきことは自分の仕事に全力を尽くすことのみ。でも、誰一人として傍観者にはなれず、必ずタスキが回ってくる。

 そう。チームに必要なのは駅伝と同じく「和」なのだ。

 これはF1、世界耐久選手権(WEC)、世界ラリー選手権(WRC)の全てで同じ。モータースポーツはどうしてもドライバーに注目が集まってしまうが、チームスポーツという視点で見ると、さらに面白くなるに違いない。(モータースポーツジャーナリスト・田口浩次)

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