【越山若水】人間の意思決定は必ずしも合理的とは言えない。中でも台風などの自然災害が起きたとき、危険を回避するため自治体が避難勧告や指示を出しても、実際に行動を起こす人は少ない▼2014年8月の土砂災害で77人が死亡した広島県では、「みんなで減災」県民総ぐるみ運動を展開。「知る」「察知する」「行動する」「備える」「学ぶ」の五つの行動目標を定めた。4年後には避難所や避難経路を確認した住民は13%から57%へ大幅に向上した▼しかし運動は「知る」ことに重点を置いていたため、18年7月に再び発生した豪雨災害で避難した人はわずか0・74%。その結果、死者・行方不明者は114人に達する大惨事となった。防災意識は高まったものの、「行動する」という意思決定にまで至らなかった▼行動経済学で説明すれば、自宅残留より避難の方がコストが高いと考える。また避難するのは面倒という現在バイアスが働く。さらに両方にリスクがあるとき、人は現状維持を選ぶ損失回避の志向が強くなるそうだ(「行動経済学の使い方」大竹文雄著、岩波新書)▼では正しい行動を促す方法は? 「既に多くの人が避難している」「あなたが避難すれば他人の命も救われる」。協調性やリーダー意識に訴えるのが効果的らしい。超大型台風19号の脅威を教訓に、生命を守る避難スイッチの感度を高めておきたい。

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