【論説】千曲川や阿武隈川、多摩川など、整備が比較的進んでいるとされる大規模河川が決壊、氾濫したことを重く受け止める必要がある。台風19号による死者・行方不明者は日ごとに増えている。まだ、水が引かない地域もあり、被害の全容はつかみきれていない。人命救助を最優先し、被災者や企業の生活再建にも最大限尽くさなければならない。

 19号は6日に発生。海面水温が30度前後の海域でエネルギー源となる水蒸気を取り込み、急速に「大型で猛烈な台風」に発達した。加えて、日本近海は海水温が27~28度と高かったため、勢力を落とすことなく上陸、東海、関東、東北と列島を縦断した。堤防が同時多発的に決壊し、濁流が住宅地や農地に押し寄せ、多大な被害をもたらした。

 気象庁は上陸3日前の9日に「早めの対策、避難」を呼び掛けるなど異例の早さで注意を喚起した。12日夜の上陸に際しては「数十年に1度の雨量」が想定され、5段階の警戒レベルで最高の5に当たる「大雨特別警報」を13都県に発令した。昨年7月の西日本豪雨では岡山県倉敷市真備町地区の51人が避難の遅れで亡くなっている。そうした教訓が今回、十分生かされたとは言い難い状況だろう。

 長野県の千曲川では堤防が約70メートルにわたって決壊し、住宅地などで大規模な洪水が発生。千曲川は長大であり、決壊箇所の堤防は他の箇所よりも数十センチ低かったという。整備途中だったともされ、治水の難しさも指摘されている。福祉施設などに大勢の高齢者が取り残され、関連死を招きかねない。弱者対策をより優先してもらいたい。

 JR東日本の車両センターでは北陸新幹線の車両10両が水没した。東京―金沢間の全線再開には少なくとも1~2週間はかかるとしているが、水没車両は全車両の3分の1に当たり、再開したとしても本数は通常の5~6割になるという。関東と北陸を結ぶ大動脈だけに、観光や経済への影響が大いに懸念される。

 地球温暖化の影響もあり、台風の勢力は増し、さらにはゲリラ豪雨も多発。被害が毎年のように繰り返されている。200人以上が犠牲になった西日本豪雨、40人以上の2017年の九州北部豪雨、15年の関東・東北豪雨と、水害により多くの命が失われた。

 政府は西日本豪雨を受け、20年度まで3年間の緊急対策として約7兆円を掛け国土強靱(きょうじん)化計画を進めている。今回の台風禍で練り直す必要はないのか、点検が欠かせないし、防災・減災を急ぎ再構築する必要がある。福井県内は今回、被害は比較的少なくてすんだが、県民一人一人がいつ、どこでも起き得るとの危機意識を持ち、備えたい。

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