【越山若水】「研究者には柔軟性と執着心の二つが必要だ。剛と柔のバランスを取ることが大事」。ノーベル化学賞受賞が決まった旭化成名誉フェローの吉野彰さんが、記者会見で語った言葉が印象に残った▼意外だったのは歴史への強い関心だ。京都大工学部に入学後、考古学サークルに入り遺跡調査にのめり込んだ。文化財の保全活動にも取り組んだ。今でもテレビの歴史番組を見るのが楽しみという▼「過去から現在に至る出来事を探究する歴史学は、研究開発にとっても面白いツール。流れを読み取るとその先の未来が見えてくる」。必要とされる未来が来ると確信があれば少々の苦労も乗り越えられる。広い視野で、直接関係のない分野も含め関心をもつことの大切さを語っていた▼では、開発したリチウム電池にはこの先にどのような展開が待っているのだろう。搭載した電気自動車が普及すれば地球環境問題の解決に貢献すると吉野さん。人工知能(AI)などと組み合わさると無人化が進み、社会変革をもたらす。再生可能エネルギーの太陽光や風力発電による電気を蓄え、安定的に電気を使うことが可能になる▼ただ、それにはさらなる技術改良が必要だ。「決め手となるリチウムイオンはまだ謎だらけ。これまでと違う発想で研究すれば新たな技術が生まれる可能性もある」。吉野さんの後に続く若い研究者に期待したい。

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