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 『万引き家族』でカンヌ国際映画祭を制した是枝裕和監督の受賞後第1作。パリを舞台にカトリーヌ・ドヌーヴが主演し、母娘役でジュリエット・ビノシュが初共演、撮影監督にエリック・ゴーティエ…と何とも豪華だ。

 ドヌーヴが演じるのは、自身を彷彿とさせる国民的大女優。その自伝本の出版を祝ってアメリカで暮らす娘一家や元夫らが集まるというホームドラマで、海外で撮っても是枝テイストはそのまま。会話は緊張感と深みに満ち、子供の使い方も絶妙なのだ。ここでのドヌーヴの立ち位置が、樹木希林が演じてきた是枝作品の母性と重なるのはもちろんのこと、「真実」というタイトルの自伝本から抹消されている親友でライバルだった女優の存在が、映画ファンにとってはドヌーヴの早世した姉フランソワーズ・ドルレアックとも重なり、これもまた常に現実の出来事と地続きでドキュメンタリー的な手触りを持つ是枝作品らしい。

 ただし、ダンスシーンやペットの陸亀がもたらすファンタジックな要素が緩急を生んでいて、いつも以上に軽やかでもある。特に、冒頭と犬の散歩に行くシーン、ラストで使用される玄関から庭へと至る俯瞰カットが効果的で、構成面で章立てのような役割を果たしながら、家族を見守る神の視座となって作品全体を温かく包み込む。ホームドラマとしてもバックステージものとしても一級の悲喜劇だ。★★★★★(外山真也)

監督・脚本:是枝裕和

出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホーク

10月11日(金)から全国公開

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