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 ニューヨークで映画制作を学んだ新人女性監督アッシュ・メイフェアが5年がかりで完成させたベトナム映画で、曾祖母の実体験が基になっているという。舞台は19世紀の北ベトナム、主人公は絹の里の富豪の元に第3夫人として嫁いできた14歳の少女。彼女の視点から、男児を産むことが唯一の務めだった父権社会に翻弄される女性たちが描かれる。

 冒頭から、まさに桃源郷のような絹の里の景観(世界遺産チャンアンでロケ)に目を奪われるが、それ以上に驚かされるのが、舟で渓谷を上ってきた主人公が屋敷でもてなされて初夜を迎えるまでのスピードの速さだ。90分程の上映時間の中で、彼女が母親になるまでの1年以上の出来事が描かれるのだが、大胆な時間経過を用いることなく、的確なカットの積み重ねによって時間が簡潔なリズムを刻んで流れていく。だから、実際には省略が効いてテンポが速いのにそう感じさせず、時間の密度が濃いことで悠久の時間の流れまでも感じられるのだ。

 その上、一つ一つの画面が絵画のように美しく、しかも同時に前後のカット、前後のシーンが密接に影響し合っているため、映像の強度が倍増している。[卵の黄身=満月=女(母)性]といった視覚によるイメージの刷り込みや、官能性とみずみずしさが共存するアンビバレントな世界観も見事だ。ベトナムから、もの凄い才能が現れた! ★★★★★(外山真也)

監督・脚本:アッシュ・メイフェア

出演:トラン・ヌー・イエン・ケー、マイ・トゥー・フオン、グエン・フオン・チャー・ミー

10月11日(金)から全国順次公開

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