【論説】北朝鮮の非核化を巡る米朝実務者協議が7カ月ぶりに行われたが、北朝鮮は「決裂」、米国は「良い議論だった」と真逆の評価をするなど、前途多難な仕切り直しとなった。北ペースは明らかで、今後も弾道ミサイルの発射などを繰り返す恐れがあり、日本は警戒を怠ってはならない。

 北朝鮮が強気の姿勢に打って出たのは、トランプ米大統領の足元を十分に見てのことだろう。来年の大統領選での勝利に向け躍起になっている中、対ウクライナ圧力疑惑が浮上。下院委員会が弾劾調査に乗り出すなど雲行きが怪しくなってきている。

 北朝鮮は、外交成果を誇示したいトランプ氏から、経済制裁の解除など譲歩を引き出せると踏んでいるのではないか。現に米側は「新しい提案」を示したという。具体的な提案内容は明らかにしていないが、最強硬派のボルトン大統領補佐官が先月解任されたこともあり、一定程度の譲歩案を提示した可能性もある。

 ただ、その都度見返りを求める、段階的な非核化を目指す北朝鮮とっては受け入れがたいものだったようだ。より以上の譲歩を引き出すため、当初から「決裂」を決め込む作戦だったのかもしれない。ボールを一方的に米国側に投げつけた格好だ。

 米国務省は2週間後の再協議に意欲を表明したが、北朝鮮が受けるかが焦点になる。首席代表の金明吉(キムミョンギル)巡回大使は「米国がきちんと準備できないなら、どんなひどい出来事が起きるか分からない」と米側次第とする考えを強調した。

 トランプ氏がどう出るかに掛かっているが、安易な譲歩をすれば、与野党から非難を浴びかねず、大統領選への影響も必至だろう。米国務省は声明で「70年に及ぶ朝鮮半島の戦争と敵対という遺産を1日で克服することはできない」と述べた。北朝鮮に粘り強く対話を働き掛ける必要がある。

 気がかりなのは、北朝鮮が弾道ミサイルの発射などをエスカレートさせていることだ。今年5月以降、新型ミサイルの発射実験を相次いで行ってきた。今月2日には新型潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星3」型の発射実験を行い、島根県・隠岐諸島沖合の日本の排他的経済水域内に落下したとみられる。

 今回の実務者協議を前に米側の反応を探る狙いがあったとの指摘がある。約2500キロと日本全域が入る射程の可能性もあるとされる。トランプ氏は米国本土に届かない短距離弾道ミサイルを事実上、容認する姿勢を示しているが、日韓にとっては無視できない。近く行われる日米韓の実務者協議では米側にくぎを刺し、連携の再構築、態勢強化を急ぐべきだ。

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