【越山若水】トーマス・エジソンと聞けば、誰しも「電球を発明した人」と答えるだろう。しかし科学史の世界では「電球の開発に携わった大勢の技術者たちの一人」と言った方がより正確らしい▼エジソンが白熱電球を作ったのは1879年のこと。ただその77年も前に、電離ガスを封じ込めた「アーク灯」が登場し、その後も白金を使った改良品などが製造された。エジソンの功績は、燃えにくい竹製フィラメントの使用と電灯会社を設立した販売戦略だった▼またアイフォーンを世に送り出したスティーブ・ジョブズでさえ、当初は携帯電話への参画に反対していたのは有名な話。事ほどさように、新しい発明や発見が1人の力で実を結ぶようなことはあり得ない(「科学の誤解大全」日経ナショナルジオグラフィック社)▼世界の注目を集める「ノーベルウイーク」が始まった。ノーベル賞は「偉大な発明や取り組みで、人類に最大の貢献をもたらした者」に贈られる。ところが120年近い歴史を経て、最近になって受賞者は「存命者3人まで」という制限を見直す動きが出始めている▼もちろんその理由は、今や科学的に高度な成果はチームの力なくして達成できないからだ。平和賞みたいな団体受賞があってもいい。先陣を切った医学生理学賞に日本人はいなかったが、他賞の候補者リストに名を連ねている。朗報を待っている。

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