【論説】学校で起きるいじめや虐待などさまざまな問題に対応するため、文部科学省は法的な側面から助言する「スクールロイヤー」、いわゆる「学校弁護士」を全国に配置する方針を固めた。

 各地の教育事務所などに拠点を置き、市町村教委からの相談に応じる。人員は約300人を予定し、経費は約4億円の見込み。来年度からのスタートを目指すという。

 文科省は昨年度から全国10自治体で活用に向けた調査研究を実施しているが、大半の自治体にとっては初めてのことで“未体験ゾーン”。実態把握や課題検証を十分に尽くし、より効果的な制度運営を実現したい。

 ■教員の負担を軽減■

 スクールロイヤーを配置する理由は、学校現場でいじめや虐待のほか、不登校や保護者とのトラブルが今も相次いでいるから。時には訴訟に至る場合もあり、専門家の力を借りることで問題のスムーズな解決が可能になる。

 また、教員の長時間労働が社会問題化する中で、弁護士の助言を生かせば現場の負担軽減にもつながる。文科省が教育委員会に行ったアンケートでは、76%の多数が「法的な専門知識を有する者が必要」と回答し、期待の大きさがうかがわれる。

 今年1月に小4女児の虐待死亡事件が起きた千葉県野田市では、スクールロイヤーの配置を7~8校に1人とする方針をまとめた。検討委員のジャーナリスト、江川紹子さんは「これまで先生は自分で解決しないといけないと思っていた。法的支援とアドバイスがあれば子どものためになる」と話している。

 ■福井県も試行開始■

 制度導入に向け、福井県教委では新しく創設した「政策トライアル予算枠」を活用する。同予算は各部長の権限で試行的に政策に取り組み、その成果を踏まえ新規事業を立案するもの。6月補正予算に1億2千万円を計上した。

 今月31日に弁護士との相談会を県庁で開く。いじめや虐待、保護者問題など個々の教員が抱える悩み事についてアドバイスを受ける。担当は同教委の顧問弁護士で、スクールロイヤーの先進地・大阪府の所属。年度内に4~5回の開催を予定している。

 弁護士によるいじめ予防の出前授業は、嶺北と嶺南の小中学校計4校で今月末から順次実施していく。いじめが法的にどんな罰を受けるかなどを説明し、その重大さを自覚してもらう。また教員対象の一般研修会も計画している。

 予算は約100万円。こうした取り組みを通じて、相談の内容を整理し対応マニュアルを学校現場に還元する。

 ■課題の共有が重要■

 文科省に先んじて取り組んでいる自治体もある。東京都港区では現在21人の弁護士が1人2~3校を担当。大阪府では府弁護士会推薦の弁護士が、公立小中学校や教委から年間約100件の相談に応じ、昨年からは高校や特別支援学校に対象を広げた。

 その中で課題も挙がる。教員からは「事前予約が必要」「教育現場に詳しくない」など期待した結果に至らなかった不満。一方で弁護士からは「担当校が多すぎる」「校長や教委の相談ばかりで、教職員の考えが分からない」などの声が出ている。

 スクールロイヤーとして、弁護士はまず教育現場の実情を理解すること。その上で教員と活発に意見交換し課題を共有する工夫が欠かせない。複雑・多様化する学校問題の解決には、両者が連携を深める体制づくりが不可欠だ。本格的な導入を前に万全の準備を整えたい。

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