宿布発電所の貯水池跡。水車に水を送った管路跡も見える=9月28日、福井県福井市宿布町

 1899(明治32)年、福井に初めて電気の明かりをともした水力発電所「宿布発電所」(福井県福井市宿布町)の遺構を後世に残そうと、当時の水路工事を請け負った熊谷組(本店福井市)が跡地を整備した。埋まっていた貯水池や水路跡を掘り起こし、国内に唯一現存する型式の発電設備を展示する施設を建てた。9月28日、現地で完成式典を開き、市に土地と建物を寄贈、「当時の土木遺産と設備が残る貴重な史跡として広く活用してほしい」としている。自由に見学できる。

 宿布発電所は、京都電燈(北陸電力の前身)が1897年に着工し、99年5月に発電を始めた福井県内初の水力発電所。熊谷組の創業者熊谷三太郎が、足羽川の水を導く水路や貯水池の石積み工事を請け負い、同社創業の地となった。

 老朽化のため1956年に廃止された後、水車や発電機は北陸高校電気科で教材に使われたり、北陸電力の施設に展示されたりして活用された。跡地は地権者が家屋を建てるなどし、水路や貯水池は土に埋もれていた。

 遺構を後世に伝えようと、熊谷組が創業120周年に合わせて跡地整備を計画。地権者5人から土地1623平方メートルを購入し、今年4月に着工した。貯水池や水車に水を送る管路の跡を掘り起こし、発電設備を展示する木造平屋の建物を建てた。解説パネルを添え、芝生広場、駐車場、看板も設けた。

 28日の完成祝賀式典で、熊谷組の櫻野泰則社長は「跡地整備により、近代産業の幕開けを担った後、長く眠っていた遺構に新たな価値をつくり出せた。地域住民に広く活用され、長く愛される施設になってほしい」とあいさつ。東村新一市長は「土木技術の継承や地域の憩いの場、観光資源として幅広く活用したい」と述べた。

 櫻野社長が跡地の土地・建物、北陸電力の水野弘一副社長が発電設備の目録を東村市長に手渡し、展示施設前でテープカットして完成を祝った。式典には約50人が出席した。

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