磁石で造形したテディベアが、カッターの刃をまとう「THAN~Hug & The painful process of growing up~」

 「結婚して他人と同居することは、毎日が小さな戦いの連続。傷つくけど、それは新しい自分を創り出すのに必要な作業なんです。女性には共感してもらえるんじゃないかな」。福井県鯖江市出身の現代造形作家土田泰子(ひろこ)さん(34)=兵庫県神戸市=が発表した新作は、そんな思いを幸せの象徴であるテディベアに託した、激しくも美しいコンセプチュアルアート。カッターの刃を全身にまとった磁石のテディベアが、傷ついても触れ合いたい、大切なものを象徴している。

 安全ピンや温度計、くしなどの日用品で、複雑な造形作品を生み出す土田さん。2018年12月から4カ月にわたり平塚市美術館(神奈川県)の企画で開いたロビー展は、NHK・Eテレの「日曜美術館」に取り上げられ、ロビー展としては最多の来場者数を記録するなど高い注目を集めた。

 私生活では今春から新婚生活をスタートさせた。東京・日本橋のギャラリー・YUKI―SISで開いている新作展は「Kai(改)」をメインコンセプトに据え、新生活で心に芽生えた葛藤を、「甲斐」「塊」「戒」「開」「解」「界」のコンセプトで表現した6作品を発表している。

 カッターの刃は磁力でくっついているもので、テディベア自身が刃ではない。「何かに触れて傷つくのは、私自身が欠点やトラウマ、コンプレックスを抱えているから。刃は私を攻撃するものではなく、寄り添うほどに自分を『戒』める愛の刃。成長させてくれる創造の刃なんです」。そんな思いを込めて「THAN~Hug & The painful process of growing up~」と名付けた。

 高さ、幅、奥行きの全てが20センチの作品サイズにも意味がある。「1人でいても何も生まれなかったが、2人でいることで自分を知り、成長することができる。0が2になったという喜びを込めた」

 10月5日まで。鉛筆削りを組み合わせて造形し、夢を描くために身を削る覚悟を表した「シタタカミモク」や、真ちゅうの安全ピンをつなげてループする感情を表現した「あがきからあがくから」など。無料。YUKI―SIS=電話03(5542)1669。

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