【論説】人生の最期をどこで、どう迎えたいですか。その支度はできていますか―。永平寺町が福井大と連携し、8月に開設した町立在宅訪問診療所は、こんな問いを投げ掛けているようだ。高齢者が住み慣れた自宅や地域で自分らしい人生が送られる仕組みづくりを掲げて始動した同施設。目標達成には住民一人一人が人任せでなく、最期について元気なうちから家族と話し合うことが欠かせない。

 団塊の世代が全員75歳以上となる2025年、全人口の約30%が65歳以上という超高齢時代が到来する。高齢者が急増しても、医師や病床を急に増やすのは難しい。国は同年をめどに、住まいから30分以内で医療・介護・生活支援・介護予防を切れ目なく受けられる支援体制「地域包括ケアシステム」の構築を急ぐ。膨張し続ける医療費削減の狙いもある。

 国の政策に合わせ、永平寺町は14年度から町内の医療・介護事業の検討に着手。その過程で、住民の大病院志向の高さが浮き彫りとなった。国民健康保険のデータでは町内にある福井大医学部附属病院への受診件数が総件数の3~4割を占めていた。

 また、厚生労働省の16年公表の調査結果によると、同町の自宅で亡くなる人の割合は6・7%で県内市町で最低だった。福井市内の大規模病院へのアクセスがよく、医師不足は問題化したことはなかったが、検討の過程で町内の開業医が訪問診療や往診に手が回らない実態が明らかになった。

 町内の在宅医療の拠点として誕生した診療所は、福井大病院の常勤医と非常勤医による医師2人、看護師3人、事務2人を配置。医師と看護師らがチームとなって通院が困難な人や自宅療養希望者、末期がん、重度障害がある人らに対して、1人当たり月1~2回訪問診療。24時間体制で対応する。ケアマネジャー、介護士らさまざまな専門職による他職種連携に重きを置く。

 昨年末から町は在宅医療に関する説明会を開き、住民と地域課題を共有することにも取り組んできた。在宅医療は家族の負担が入院より大きく、家族や親族を含めた意思の統一が不可欠になる。自分の人生の最期をどう過ごしたいか、家族と終末期医療について話し合っておく大切さも説く。

 高齢期は慢性疾患など「治らない病」と付き合いながら生活をすることになる。医療や介護という別々の枠組みでなく一体となった生活支援も重要だ。在宅ケアをボランティアが支える地域互助の大切さも含め、自宅でのみとりについて住民の理解を深めようとする同町の活動は、超高齢時代に向け他の自治体にも参考になるだろう。

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