【越山若水】「僕の前に道はない/僕の後ろに道は出来る」。詩人の高村光太郎の代表作「道程」である。偉大な彫刻家の父・光雲から独立し、わが道を切り開く決意を高らかに宣言している▼ロダンの「考える人」に衝撃を受けた光太郎は、自然こそが美の根源という考えに傾倒。芸術家としての自立を誓う。ただ不安は消えず、自然を父親に見立て懇願する。「僕から目を離さないで守る事をせよ/常に父の気魄(きはく)を僕に充(み)たせよ/この遠い道程のために」▼敷かれたレールの上を歩くのでなく、前例のないことに挑戦するのは勇気がいる。彫刻「手」や詩集「智恵子抄」で名をなした光太郎でさえ、自身を鼓舞するほどの緊張心。学業にしろ、仕事にしろ、新たな一歩を踏み出すとき、ぜひ声に出して読みたい詩文である▼教育学者、齋藤孝さんの「日本人のすごい名言」(アスコム)を参考にしたが、では、安倍内閣の注目株・小泉進次郎環境相の思いはどうだろう。原子力防災担当相を兼務し、父親は「脱原発」を主張する純一郎元首相だ▼きのうは福島第1原発を初めて訪問。汚染土を搬入する中間貯蔵施設を視察した。ただ就任後には場違いな発言や答弁も見受けられた。関西電力の金品受領問題もあって、原発への注目度は高まっている。親の威光に頼ることなく、小泉氏が自らの「道程」をどう歩むのか、お手並み拝見したい。

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