開発したハイブリッド小麦(右)。標準的な小麦(左)に比べ、1穂当たりの着粒数が多いことが分かる

 福井県立大学生物資源学部の村井耕二教授(58)ら研究チームは10月1日、異なる品種を掛け合わせた「ハイブリッド(雑種)小麦」の開発に成功したと発表した。国内の生育環境を生かした手法で、標準の品種に比べ収量が20%以上多い新品種を生み出した。農林水産省などによると、ハイブリッド小麦の開発は日本で初めて。

 ハイブリッド品種は一般的に環境の変化に強く、収量が多くなる。小麦は稲と同じように、自分の花粉が自分の雌しべに付いて種子(穀粒)ができる自殖性植物。開発には花粉を作らない“母親”と、別の品種の“父親”と掛け合わせる必要がある。

 村井教授は母親小麦の開発に向け、「農林26号」など三つの品種を掛け合わせて選別。福井県など秋まき栽培に適し種を維持する一方で、日照時間が長い春まき栽培ではおしべができないという二面性を持つ品種を作り出した。

 父親小麦は、より強いハイブリッド品種の開発に向け、母親と遠縁のヨーロッパ由来の100品種ほどの中から選んだ。その上で、春まきの北海道で双方を近くに植えて自然に受粉させ、ハイブリッド小麦の種子が完成した。

 開発したハイブリッド品種は、福井県など秋まき栽培に適しているという。県立大の実験農場で育てたところ、県内で栽培できる「ふくこむぎ」と比べ1穂当たりの着粒数が多く、20%以上の多収性があった。昨夏、岡山県で行われた日本育種学会で発表、今年7月には国際学術誌に論文が掲載された。

 農水省によると、小麦の1人当たりの年間消費量は33キロほどでコメに次いで多いものの、国内自給率は12%にとどまり、大半は輸入で賄っている。村井教授は「小麦の国内生産量を上げることは急務」と感じ、30年ほど前からハイブリッド小麦の研究に着手。福井県大野市出身の恩師から資料を引き継ぎ、他の研究機関などと開発に取り組んできた。

 栽培は1年ごとのため、母親小麦の確立に時間がかかった。予想した結果が得られず「2年間ほど研究が戻った時期もあった」が、ようやく実用化が見える段階にたどり着いた。

 1日に同大永平寺キャンパスで会見を開いた村井教授は「普及すれば、農地面積が少ない日本の自給率アップにつながる」と強調。まずは北陸での生産を目指し、企業との連携や品種登録を検討していくとした。環境ストレスに対する強さや新品種に適した加工法も調査を進める考え。

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