【論説】税率が8%から10%に引き上げられる消費税増税がスタートした。鉄道関係でシステム障害が発生するなどしたが、おおむね無難な出だしといえるだろう。

 ただ、飲食料品は軽減税率により8%に据え置かれたのに加え、クレジットカードやスマートフォンなどによるキャッシュレス決済時のポイント還元で5%や2%が導入されたため、10%、8%、6%、5%、3%という実質5通りの税率が存在することになった。どの店で買うか、キャッシュレス手段は何など戸惑った人も少なくないだろう。

 ちりも積もれば、かなりの節約になるからだが、問題は、現金払いしかして来ず、キャッシュレス手段を持たない高齢者や子どもがないがしろにされることだ。住民税の非課税世帯などには25%の特典があるプレミアム商品券が発行されるが、対象にならない世帯でも苦しい年金生活を送る高齢者は多い。具体的な支援の手が必要ではないか。

 悪影響は中小企業にも及ぶ。国費で賄われるポイント還元5%は中小を対象にしているが、実際に申請したのは約200万の企業のうち約50万という。中には価格に転嫁できず廃業をしたり、考えたりする事業者も出てきている。キャッシュレス化と中小企業支援を同時に達成するとの目標には程遠い。

 税率アップ前の駆け込み需要は前回2014年時に比べ大きくはなかったようだ。軽減税率やポイント還元に一定程度の効果があったとみるべきだ。しかし、ポイント還元は来年6月末日までで、7、8月は東京五輪・パラリンピック効果で景気は持続するとしても閉幕後、一気に腰折れしかねないとの指摘がある。

 日本経済は米中貿易摩擦の影響をじわじわと受けつつある。日銀が発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の景況感が3四半期連続で悪化。消費税増税が個人消費に冷や水を浴びせる可能性は否定できず、税率が8%に上がった際、マイナス成長となった14年の二の舞いになる懸念もある。

 今回の増税と並行して、増収分を充てる幼児教育・保育の無償化がスタートした。子育て世代には恩恵となろう。だが、3~5歳児が無料で保育所などに入ることができても、その先の学童保育では約1万8千人が「待機児童」で過去最多を更新したとされる。政府は23年度末までに約30万人分拡大する方針だが、解消されるかは見通せない。

 今回の増税による増収は年間約5兆7千億円。単純計算で消費税収は20兆円を超え、最大の税目となる。政府は、財政再建や社会保障制度の安定化に費やされることを粘り強く訴え、国民理解を一層得るべきだ。

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