JAXAの研究開発員吉川健人さん

 小惑星りゅうぐうを調査している宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ2」。地球から約3年半掛けてたどり着いた場所で、惑星の起源、地球の海の水の起源などを探求するプロジェクトに、福井県福井市出身でJAXAの研究開発員吉川健人さん(29)が携わっている。「誰も行ったことのない場所で、誰もやったことのないミッションに携われるのはとても光栄。毎日が刺激的です」と吉川さん。宇宙を舞台とする仕事のやりがいや苦労を語ってもらった。

 ―はやぶさ2プロジェクトでの仕事内容は。

 「AOCS(姿勢軌道制御系)と呼ばれる分野。はやぶさ2は、りゅうぐうに到着後、高度20キロの場所を定位置にしていて、普段はその場所に滞空しています。ミッションのたびに降下し、また定位置に戻ってきますが、安全にミッションを遂行するには探査機の降下速度をどれぐらいにすればよいか、といったことを考えています。20キロ離れた場所にとどまっているときも、放っておくと落ちていったり姿勢が変わったりするので、調整して最適な位置を保つ仕事も担っています」

 ―達成感のあった瞬間は。

 「これまでに3回ありました。2回のタッチダウン(着地)と、はやぶさ2に搭載したミネルバ2という小型探査ロボットを放出したとき。はやぶさ2が着地したのを検知して、金属の球を地表に向かって打ちサンプルを採取しましたが、どうやれば安全に実行できるかを考えました。はやぶさ2の動きを何度もシミュレーションして、これぐらいの速度や姿勢でやれば大丈夫そうだ、という部分を担当しました」

 ―運用で大変なことは。

 「誰もりゅうぐうの表面を触ったことがないので、タッチダウンのとき探査機にどんな影響が出るか分かりませんでした。なので、これまでに観測したデータを解析して予測しました。降下する速度を変化させて1万回から2万回くらいさまざまな条件でシミュレーションしたり、(りゅうぐうの地表に近いと考えられる)砂や岩を買ってきて、硬さを測るという地味な実験にも取り組みました」

 「はやぶさ2にはさまざまな人が関わっています。各分野の担当者にバトンをつないでいかなければならないというプレッシャーは相当なもの。自分の解析データが役に立ち、チームに貢献できてうれしかったです」

 ―福井県や県内企業が県民衛星を打ち上げるプロジェクトを進めていることをどう感じているか。

 「昔は福井と宇宙のつながりは全くイメージできませんでした。科学技術に目を向け、宇宙分野の研究開発に取り組んでいるのはすごいと思うし、うれしく思います。子どもたちにとっても、小さいころから宇宙を身近に感じられる環境があるのは重要なこと。試験設備も充実しており、たくさん衛星を作って打ち上げてほしいです」

 ―宇宙分野を志す子どもへメッセージを。

 「小さいときに好きなことを見つけられるのは幸せです。好きなことが見つかったら、とりあえずそれをやってみてほしい。宇宙の技術者や研究者になりたいなら、英語とプログラミングは大切。小さいころから学んでおくといいでしょう」

 ―今後の目標は。

 「はやぶさ2以外にも、火星衛星探査計画(MMX)などに携わっています。宇宙で誰もやっていないことに挑戦したり、誰も行ったことのない惑星に行ったりしたい。行くのは人でもロボットでも探査機でも構いませんが、実現させる技術を研究したいと思っています」

 

 【はやぶさ2】探査機はやぶさの後継機で、太陽系の起源や進化、生命の原材料物質を解明するためのミッションに挑んでいる。本体の大きさは1メートル×1.6メートル×1.25メートルで、重さは約600キロ(燃料含む)。2014年12月に打ち上げられ、約3年半掛けてりゅうぐうに到達。表面や地下の岩石試料の採取に成功したとみられる。10月には、小型探査ロボット「ミネルバ2」を放出し、りゅうぐうの周囲を周回する様子を観測し、重力について調べる最後のミッションを行う。年末ごろにりゅうぐうを離れ、2020年末に地球に帰還する予定。

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